日立が鉄道事業で世界展開を強化 グローバルCEOのドーマー氏に聞く

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ヨーロッパの鉄道事業には「十分に機会がある」と自信を見せたグローバルCEOのドーマー氏
日立製作所の鉄道事業は売上高1682億円(2014年3月期)と、全体の売上高(約9.6兆円)の2%にも満たない。だが、グローバル展開の先頭を走る事業として位置付けられており、17年3月期には売上高2400億円、海外売上比率は現状の35%から65%に引き上げる方針を掲げている。
グローバル化への大きな転換点は、12年7月に英国の大規模プロジェクト、都市間高速鉄道車両置き換え計画(IEP)を受注したこと。13年7月の追加受注分を含め合計866両の車両製造と27年半にわたるメンテナンス事業を総額57億ポンド(約9800億円)で獲得した。海外事業や保守などのサービス事業比率の向上を重視する日立には、まさにモデルケースとなるプロジェクトだ。
世界展開をさらに加速するため、今年4月には日立として初めて「グローバルCEO(最高経営責任者)」という役職を交通システム事業に設けた。それに就いたのが、英子会社の日立レールヨーロッパ会長であるアリステア・ドーマー氏だ。今後、鉄道関連事業をどのように強化していくのか。ドーマーグローバルCEOに聞いた。

 

――日立の鉄道事業の強みと、海外プレーヤーに追いつかなければならないところは。

われわれの製品の品質は極めてすぐれている。一方、追いつかなければならないところは、グローバルでの存在感を高めていくということだ。幸い日立は非常に大きな企業で、世界中に拠点を展開している。ローカルマーケットを理解するために、その拠点を活用することができる。

――仏アルストム、独シーメンス、加ボンバルディアのいわゆる「ビッグ3」を目指すのでしょうか。

鉄道だけをみるとビッグ3よりもかなり小さいが、日立全体の事業規模はビッグ3よりもはるかに大きい。日立グループのパワーを使うことができるので、その中に鉄道事業があるのはメリットだ。

日立は鉄道車両の製造工場を日本と英国に抱えている。一方、競合他社は世界中の各地に非常に多くの工場を抱えており、それが頭痛の種なのではないだろうか。事業を伸ばすことは重要だが、引き続き利益を伸ばしていくことも大切だ。

カギ握る通勤列車の受注

適正規模がどの位なのかは分からないが、この先、もう少し規模を拡大していく必要がある。ただし、需要のある場所で売り上げを伸ばし、戦略的かつ利益の上がる契約をきちんと確保することが大切だ。

――どのような製品分野や市場を狙っていくのか。

運行管理や信号関係の製品で欧州の認証を取得しており、欧州中でこの技術を展開することができる。他の市場でもスペックとして活用できるので、オーストラリアやほかの新興国市場にも展開できる技術だと考えている。

保守が付いてくる車両事業も伸ばしたいが、信号関係の装置なども拡大していきたい。マーケットに関しては、さまざまなチャンスがいろいろなところにあるので、直接的なお答えをするのは難しい。ベストなリターンを上げるために、どこに資源を投入しなければならないかを検討する。

――15年半ばに完成する英国ダーラム州の工場で、IEPに納入する『Class 800シリーズ』の生産を行う。それが終了する19年以降、工場や人材をどのように活用していくのか。

英国はこの10年で列車利用者数が5割も増えており、車両ビジネスにとって成長市場だ。ここでは通期列車が主要商品になる。IEPのような国際高速列車タイプも追加のビジネスが出てくるだろうが、まずは通勤列車のキャパシティー上げる必要がある。

現在2つの入札に参加しており、その結果は来年の始め頃に出る。英国の工場についてはまったく心配していない。英国もヨーロッパも新しい機会は十分あり、成功を収める。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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