レアアース問題の急所、白熱する日中「ハイテク磁石」戦争
かつての中国政府は外貨獲得のためにレアアースの輸出を奨励していたが、2004年に国が輸出数量を管理する現在の輸出許可枠制度を導入。その後は、許可枠削減を始め、輸出税の課税(06年)と同税率引き上げ(08年、5%→最大25%)、無免許採掘業者や密輸の取り締まり強化など、一貫して国による管理と輸出規制を強めてきた。
では、一連の輸出規制強化の目的とは何なのか。中国側は「採掘による環境汚染への対応策」と説明するが、背後には中国の産業戦略も見え隠れする。
「世界の工場」となった中国は、世界のレアアース需要の5割以上を占める最大の消費国でもある。近年は自国内の経済成長も重なって消費量がさらに増えており、限りある資源を国内の産業へ優先的に回したい。また、ある業界関係者は、「レアアースを餌にして、日本の先端産業を自国内に誘い込むのが中国の作戦だ」と解説する。
次世代車支えるハイテク磁石
トヨタなど自動車業界も強い危機感
中国が狙う日本の先端技術。その代表が「ネオジム磁石」と称される高性能の永久磁石(=写真、日立金属提供)だ。
2種類のレアアース(ネオジム、ディスプロシウム)を原料に使うネオジム磁石は、従来のフェライト磁石の10倍もの磁力を持ち、機器の小型・軽量、省エネ化を陰で支えるハイテク磁石である。
HDDのボイスコイルモーターを始め、インバーターエアコンなどの省エネ型家電やFA機器に搭載されるモーター、医療用MRI(磁気共鳴画像診断装置)、携帯電話の薄型スピーカーなどに欠かせない。しかも、自動車産業の未来を担うハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の中核モーターにも必須のため、その重要性はさらに高まっている。