レアアース問題の急所、白熱する日中「ハイテク磁石」戦争

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トヨタなどの調査は、1点1点の部品にまでさかのぼり、あらためて自動車におけるレアアース使用の全容を完全に把握するためのものだった。

そして、トヨタやホンダが調査に乗り出した数日後、恐れていたシナリオが現実のものとなる。尖閣諸島問題の報復措置として、中国側は9月21日を境にレアアースの対日通関申請の受け付けを停止し、日本への輸出を止める強硬策に出たからだ。輸入商社には企業からの問い合わせが殺到、レアアース対日禁輸に産業界は揺れた。

その後、通関手続きは9月末から再開され、長期にわたって輸入が途絶えるという最悪の事態は何とか免れた。しかし、だからといって手放しで喜べるほど、事は単純ではない。

レアアースの輸出規制強める中国
供給量激減で価格は急騰

「ここまで減らされるとは」--。禁輸騒動よりおよそ2カ月前の今年7月上旬、中国政府の発表に関係者らは衝撃を受けた。中国はレアアースの海外輸出を国が管理しており、販売業者は国からそれぞれ割り当てられた数量枠の範囲でしか輸出できない。

中国政府はその輸出許可枠について、2010年の総量を前年より4割も少ない約3万トンに減らす、と発表したのだ。1~6月の輸出済み分を差し引くと、7~12月に残った海外輸出の総枠はわずか8000トン、前年下期比較での削減幅は実に7割にも及ぶ。これを欧米など他の需要国と分け合うので、実際に日本に入ってくる数量はさらに少ない。

7月の発表を受けて、国内への輸入価格は急騰(グラフ参照)。液晶やHDD用のガラス基板製造に使うセリウム研磨剤の最大手、昭和電工が11月出荷分から4倍もの値上げを決めるなど、産業界への直接の影響も出始めている。量の問題はさらに深刻で、一部の業界はレアアースの調達難から秋以降の生産縮小が避けられないという。

こうした事態に至る伏線はあった。

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