日銀、追加緩和に潜んだ財政再建阻む怖い副作用
10月5日、追加緩和策を打ち出した日本銀行。内容は市場予想を超えるものだったが、これに対し、金融市場は敏感に反応した。
株式相場は5日のニューヨーク、6日の東京市場ともに上昇。日米の中央銀行がそろっておカネをジャブジャブに供給することへの期待が高まった。新興国の株や国際商品市況も上昇。J−REIT(上場不動産投資信託)と不動産株は全面高。緩和策にJ−REITとETF(指数連動型上場信託)購入のサプライズが盛り込まれたためだ。
株ばかりでなく債券価格も急上昇。10年物国債の金利は一夜で0・075%低下して0・82%となった。これには流動性の効果に加えて時間軸効果も効いたのだろう。
一方、相対価格である為替相場は円高方向へ押し戻され、日本に厳しい結果となった。米国のほうが金融緩和の“のりしろ”が大きいためだ。
そもそも日銀の緩和策は、11月に米FRB(連邦準備制度理事会)が国債買い入れ増額などの追加緩和に進むことを確実視してのこと。市場の関心は米国に移っている。
ミニバブルで終わり?
日銀の追加緩和の目的は、このような流動性相場を作り出すことでなく、長引くデフレからの脱却と輸出企業を脅かす円高への対応のはずだ。
しかし、後者に対しては無力なことが早速、露呈した。足元の円高圧力がバブル崩壊による欧米のバランスシート調整に起因する以上、単独で風に逆らうことは難しい。為替介入同様、風車に突っ込んで吹き飛ばされるドン・キホーテのような感がある。
ではデフレ脱却についてはどうか。市場を見ているエコノミストらはおおむね否定的だ。ゼロ金利のもとでも資金需要は乏しく、「ひもを押す」と呼ばれる金融政策の効果の出ない状況だと見ている。