誰もが「演技をしながら生きている」と言える理由 「パフォーマンス心理学」の4つの学問領域
駅で転んだ日のあなたも、朝は「さて今日はどんな服でどのネクタイがいいか」と考えたことでしょう。演劇では「衣装係」の仕事です。
「転んだ時に無様な恰好をしないですばやく歩き去る」というのは、演劇ならば「脚本家」が「台本(スクリプト)」に書き、「俳優」が演じるところです。
その時ちらっとあなたを見て、武士の情けと思ったかどうかは別として、見なかったことにして歩き去ってくれた通行人は、演劇ならば「観客」。駅の階段は「舞台、ステージ」です。
簡単に言うと、私たちは日々自分の行くところを360度のポータブルステージとして、その時その時の相手を観客あるいは共演者として、日々の演技を展開しています。
そこでは演者、脚本家、演出家、衣装係、照明係が、あなたというたった1人の人です。1人で5役です。しかも、あなたはそんなあなた自身を観察していますから観客でもあり、1人6役です。
演技以外の隣接領域
演技する時の人間の心理に立ち入ることで、演劇の次の隣接領域はまず心理学。次に、どんな社会文化の中にその演技を置くかを解明するには社会学と文化人類学。
第3に、言葉で語る人間の宿命として言葉の分析・研究をするのがスピーチ・コミュニケーション学です。ここには言葉以外のノンバーバルの研究も含まれます。
あなたという1人の人間が、4つの学問領域をカバーする学際学問パフォーマンス心理学の対象であり体現者です。
言ってみれば、国際人でもあり「学際人」であることが最高のパフォーマーには求められます。ハードルが高いけれど、意識することで、どこまでも私たちは成長します。
なお、演技論として、
*ニーチェ、訳 木場深定、1970『善悪の彼岸』岩波文庫
*スタニスラフスキイ、訳 山田肇、1955『俳優修業』未来社
* Schechner R. ,1988 , Performance Theory, London: Routledge
社会心理学として、
*E・ゴッフマン、訳 石黒毅、1974『行為と演技―日常生活における自己呈示 (ゴッフマンの社会学1)』誠信書房
が参考になります。
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