半身不随に絶望した男が障害者の為に起業した訳 リハビリ後の社会復帰で知った障害者雇用の過酷

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増本さんには右半身のマヒと高次脳機能障害が残った。両親はもう自活は無理だろうと何度も感じ、地元である長崎に連れて帰ることも頭をよぎったが、両親も高齢で裕司さんの介護なんてできない。看護師さんからは気の毒そうな目で見られたという。また、医師が研修医をゾロゾロと連れてやってきて「これが半身マヒというものだ。よく見ておけ」と説明していて、見せ物にされたように感じた。

「入院していたある日、回診の先生に『僕はもうダメなんですか?』と聞いたら、おどおどされながら『人生終わったけど頑張ってください』と言われました。彼に悪気はなかったと思うのですが、ああ、終わったのかと思いわんわん泣きました」

暇すぎて1日8時間もリハビリに励む

そこから増本さんはリハビリに励むようになる。本来なら1日20分すればいいものを1日8時間もやった。なぜそんなにリハビリを頑張れたのかと問うと、暇でやることがなかったからだという。リハビリははっきり言ってつまらなかったが、逆につまらないことを必死でやったらどうなるのだろうという思いもあり、毎日長時間取り組んだ。その懸命なリハビリを4年間続けると、何とか杖を使わずに歩くことができるようになった。また、リハビリ中は働けないので障害年金で過ごした。

リハビリをやった4年間、東京都多摩障害者スポーツセンター(東京都国立市)に通い、障害者の友人ができた。この施設は障害者が無料で利用できる。ここで、さまざまな障害のあるいろいろな人に出会った。身体障害者もいるし知的障害者もいるし精神障害や発達障害の人もいる。

その人たちと会話をしていると、障害者というものが大まかにひとくくりにされていて、理解が及ばず誤解されている面がたくさんあるのではないかと強く感じた。そして、いつかその問題を解決できるような「事業」を自分の手で作りたいと思った。しかし、具体的な案もお金もなかったため、とりあえず障害者となった自分が社会で働いてみようと思った。

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