寄り道も「猫」にはすべてお見通し?すごい嗅覚 「猫」の嗅覚は人間の約10万倍!その驚きの理由

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ねこは、仲間のニオイをどのくらい嗅ぎ分けることができるのでしょうか。家で、複数のねこが一緒に飼われている場合は、少なくとも、一緒に暮らすねこと、他の知らないねことのニオイの違いは嗅ぎ分けられるようです。

外でノラねこやねこカフェのねこと遊んで帰ってくれば、ものすごい勢いで、かつ執拗にニオイを嗅がれます。これは、ねこが自分や家のなかにいる他のねこのニオイと、知らないねこのニオイとを嗅ぎ分けている証拠です。いぬでも同様だと思います。

ノラねこの尿を使った面白い実験があります。

いつも一緒にいる同じグループのねこと、たまに出会うことのある隣のグループのねこ、そしてこれまで出会ったこともない未知のねこの、それぞれの尿のニオイを、ノラねこに嗅がせて、その反応時間を計測した実験です。ニオイを嗅ぐ時間が長いほど、その尿を残したねこに興味があり、ニオイのなかの情報を詳しく調べていると、ここでは考えます。

結果には、明らかな違いが見られました。つまり、同じグループのよく知っているねこの尿は、それほど長い間ニオイを嗅ぎませんが(10秒から15秒程度)、隣のグループの尿となると、それよりも時間が長くなり、まったく出会ったこともないねこだと、さらに長く30秒以上もニオイを嗅ぎ続けることもあるとの結果が出ました。

この傾向は、オスによるスプレー尿(繁殖期にオスが尻尾を上げて、スプレーのように吹きかける、臭い尿)に対しては特に顕著に表れ、また、全体的にメスよりもオスのほうが、反応する時間が長いという傾向がありました。

これらの結果から、少なくともノラねこは、自分のグループと、隣のグループ、そして未知のねこの尿のニオイを、嗅ぎ分けることができると思われます。1匹1匹のねこについて嗅ぎ分けているかどうかについては、この実験からはわかりませんが、これだけの嗅ぎ分ける能力があれば、ねこごとのニオイの嗅ぎ分けができたとしてもおかしくはないと思われます。

ねこが自分のニオイをなすりつけたがる理由

ねことねこが出会った時、お互いの顔や身体を擦りつけ合います。これは、ねこの身体にはたくさんの臭腺があり、そこから分泌される自分のニオイを、相手になすりつける行動です。ねこの臭腺は、顔やお尻に集中しており、主なものでは、額や口のまわり、あごの下、肛門付近、尻尾、それに足の裏にもあります。

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なぜ、ねこが飼い主や身近なねこに、さらにはモノに、自分のニオイをつけたがるかについては、いろいろな理由が考えられています。ひとつは、飼い主や仲のよいねこにニオイをつけることによって、愛情を表現するのと同時に、自分の所有物であることをアピールしていると考えられています。

また、人やねこも含めて、そのねこにとって身近なモノから、自分のニオイを嗅ぎ取ることによって、つまり自分のニオイに囲まれることによって、精神的に安定するともいわれています。

山根 明弘 動物学者

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やまね あきひろ / Akihiro Yamane

1966年兵庫県生まれ。西南学院大学人間科学部社会福祉学科教授。理学博士、生物学者。専門は動物生態学、集団遺伝学など。1989年九州大学理学部卒業。国立環境研究所、京都大学霊長類研究所、北九州市立いのちのたび博物館を経て現職。福岡県・相島にて、7年間にわたるフィールドワークを行い、ねこの生態を実施。著書に『わたしのノラネコ研究』、『ねこの秘密』などがある。

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