34歳がんで逝った編集者がネットに刻んだ15提言 20年以上前のHPが今も当時のまま守られている

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<前の入院のとき、病院なんかで死にたくないと思ったし、実際ね、やっぱりこう、人生の中で死にたいんですよ。隔離された中ではなくて、その、生きてる中で死にたいんですよね。変な言い方ですけど。>
(『がんとの闘い方は自分が決める』)

「生きてる中で死」ぬためにはできるかぎり現状を把握して、現実的に選べる選択肢から最善を選んでいくしかない。だから、体調が悪化していくなかで編集の仕事が続けられなくなったことも受け入れた。また、体調の悪化で選択肢が狭まっていくなかで最善を選び続けるには、自分のなかの優先順位を明確にしておく必要もある。そこも山下さんは備えていた。

<正直いって、いまは家庭で妻と息子と一緒に時間を過ごすのが、生きてるというか、いちばん楽しい時間ですよね。もちろん仕事も好きですけど、こういう病気になったので、ある種、やっぱり普通の人よりは残り時間がすごく短くなったわけで、その中では家族との時間っていうのはいちばん楽しいし、いちばん大事にしたいですね>
(『がんとの闘い方は自分が決める』)

放送は反響を呼び、翌月の7月2日に再放送することがすぐに決まった。取材班がその許諾を取ったとき、山下さんは肝機能障害が起きて自宅静養をしていたという。亡くなったのはそれから間もなく、7月7日のことだった。

創立25周年に電子書籍版を発行

小腸がんが発覚して2年2カ月。会社は山下さんの病状を理解し、山下さんに最適な環境を絶えず模索していた。手術直後は週2日ペースで在宅勤務を認めていたし、抗がん剤治療で入院する際のサポートも厚かった。そして、山下さんの没後も残されたものを大切にしている。

Kindle版の『Ken's Home Page インターネット草創期に活躍した若き編集者のメッセージ』(筆者撮影)

インプレス創設25周年の2018年4月、グループの電子出版事業会社はKen's Home Pageの電子書籍版とプリント・オンデマンド(POD)版を発行している。同書の冒頭には、刊行の背景についてこうある。

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