次期韓国大統領選は最大野党候補が若干リード テレビ討論会では「勝負なし」の判定だが…
――有力候補である李、尹の両候補者の討論と内容は、有権者にとってどういう印象を与えたでしょうか。
市長、知事を務め、百戦錬磨の政治家である李在明氏のディベートの巧みさと、政治家としては新人の尹錫悦氏の素人っぽさの差異が際立った。李在明氏が、「RE100」(企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)に言及してこれに対する見解を尹錫悦氏に質し、尹氏を絶句させる場面もあった。
李在明氏は、自らの不動産開発疑惑について3人の候補から攻撃されたものの、なんとかかわして逃げ切った印象だ。ただ、ほかの候補をあしらうような、あまりにも場慣れした李在明氏の姿勢が有権者から好感を持たれたのかどうかは疑問だ。一方の尹錫悦氏も、言いよどみやせき払いをしばしばするなど弁舌さわやかとまでは言えなかった。しかし、事前によく準備したと思われる発言を続けることで、失言もなく無難にこなしたと言える。豊富なブレーンを抱え、そのアドバイスを短期間でひとまず身に付けた対応力の高さは、さすが元検事だと感じた。
外交安保、対日関係では議論不足
――各候補者は、自分の公約内容の説明など有権者にアピールできていたでしょうか。
討論は1回目、2回目、それぞれ2時間。テーマは不動産、外交・安保、雇用・成長、若者政策、メディアとの関係などテーマごとに時間が割り振られたが、時間不足で各テーマ、議論があまり深まらなかったところがあった。
例えば、日本が最も注目する外交・安保分野では、THAAD(サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)の再配備問題は、現在も続く米中対立という状況の中で、韓国がどのようなスタンスに立つのかが問われる問題なだけに、その議論のみで時間を消費してしまった感がある。
1回目のテレビ討論では司会者は日韓関係にも触れていたが、尹錫悦氏が「共に民主党政権期間中に、韓国とアメリカ、韓国と日本との関係が崩壊した。これを正常に回復させることが優先だ」と述べたにとどまった。李在明氏はこれまで、「実用外交」を展開すると主張し、これまでの記者会見やメディアとのインタビューからうかがえた「対日強硬」というイメージは間違いだとさえ述べていた。だが、テレビ討論で李在明氏は、「バランスの取れた実用外交を行う」と述べただけだった。本人の口から、対日外交を具体的にどう位置付けており、どのように展開するつもりなのかを聞きたかったところだ。
――他の2候補者の討論ぶりはどうだったでしょうか。
進歩(革新)系野党「進歩党」の沈相奵氏が、同じ革新系の李在明氏の夫人が行った不適切な発言や不動産開発都市開発事業不正疑惑などを鋭く追及しているのが印象的だった。
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