なぜ改善されたかというと「IT業界の深刻な人手不足」があります。現在はどのプロジェクトでもITエンジニアが不足しており、せっかく確保したエンジニアが、扱いがひどいからと言ってすぐ辞めてしまっては、配属先にとっても大きな痛手となります。そのため、派遣先での待遇は改善されていますし、残業も抑制しているのが現状です。
もちろん例外もあります。そのため、大企業は自社で直接採用せず、ニーズがある時だけ外部からエンジニアを貸してもらい、ニーズが減ったら借りているエンジニアを減らす調整を行っています。
確かに10年ほど前は、ITエンジニアの転職希望者から「派遣先の扱いがひどい」「残業が多すぎる」といった相談が多かった。しかし、ここ最近はそのような声は少なくなっており、ITエンジニアの需要が上昇していることで、労働環境の改善が進んでいることがわかる。
ここまで河井氏に「IT派遣(SES)」の現状について解説してもらった。結論として、IT派遣がブラックだと言われる要因には次の3点がある。
・SES企業の中には「還元率が低い」「還元率を公開していない」ところもあること
・エンジニアに配属先の選択権がないこと(新人だけでなく経験者でも)
では、どのような就職活動をすれば、ITエンジニアとして安定したキャリアを歩めるのだろうか? そして「IT就職の正解」はあるのだろうか?
これだけ「IT派遣(SES)」についてネガティブな情報ばかり聞いてしまうと、IT派遣(SES)を選択肢に入れたくないと思ってしまうのは当然だと思う。しかし、日本のエンジニアの約7割がSESで働いていることは事実であり、未経験者採用に至っては9割近くがSES企業という現実がある。そのため、最初から選択肢に入れないことは、そもそもITエンジニアとして就職できないリスクも含んでいる。
さらに、自社勤務であれば年収が高く、スキルが身につくというわけでもない。中小規模のIT企業には、自社勤務であっても技術レベルが低いサービスを扱っている場合もある。
転職を視野にキャリア戦略を考える
そこで10年間未経験者のIT就職を支援してきた筆者がおすすめするのは、「転職を折り込んだキャリア戦略」だ。
最初に入社する会社を「終身雇用先」として考えるのではなく、未経験者から経験者になるための「ファーストステップ」くらいに考え、より良い条件を働きながら、転職しながら手に入れていくことだ。
幸いにもIT分野は転職が一般的で、キャリアアップしているエンジニアのほとんどは転職やフリーランスへの転身をしている。これからIT就職を考えている人は、「ブラックなIT派遣の特徴」を参考にしつつ、長い目で自分のキャリアを考え、スキルと経験を効果的に蓄積してキャリアアップしてもらいたいと思う。
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