「IT業界」にはさまざまな働き方があり、「システムインテグレーター(SIer)」「ITコンサル」「ベンダー」「SES」などの横文字、カタカナ表記のものが多く、同じような事業を行っていても別の名称なんてことすらある。今回着目する「IT派遣」と言われる働き方も、時には「SES」と言われたりする。「IT派遣」と「SES」は何が共通点で、何が違うのか。
河井社長:「IT派遣」は読んで字のごとく、「IT分野において”派遣契約”として客先常駐する」働き方です。昔は客先常駐で働くエンジニアのほとんどは「IT派遣」と呼ばれていました。ただ、ここ数年で「SES(システム・エンジニアリング・サービスの略)」と呼ばれることも増えてきました。
「IT派遣」と「SES」は、本質的にはあまり変わらない働き方です。「客先常駐で働いている」点は共通ですが、違いとしては「SES」は必ずしも「派遣契約」ではないという点です。「業務委託」や「フリーランス」という形態で働いているエンジニアが客先常駐で働いている場合も「SES」と表現します。
「客先常駐」とは、自分が所属する企業ではなく、別の企業に常駐して働く勤務形態のこと。IT業界ではこの形態で働いているエンジニアが多く存在する。
未経験者の受け皿になっているSES企業
現場でキャリア支援を行っていると、未経験者や経験が浅いエンジニアを採用している企業のほとんどは「SES企業」だと言える。目安として3年以上の経験を積んでいる求職者であれば、「客先常駐ではない求人」の採用要件を満たすことができるが、経験がない、もしくは経験が浅い人材向けには、ここまで「SES企業」の求人ばかりなのだろうか?
河井社長:実は「日本のIT業界はSES企業で成り立っている」と言っても過言ではないんです。日本には120万人 のITエンジニアがいると言われており、その約7割が客先で働いています。
これはなぜかというと、解雇規制が強い(社員を解雇しづらい)日本では、正社員として採用するリスクが大きい。そのため、大企業は自社で直接採用せず、ニーズがある時だけ外部からエンジニアを貸してもらい、ニーズが減ったら借りているエンジニアを減らす調整を行っています。
そのため、「SESはブラックだからやめとけ」と言っても、日本のIT業界では構造的に発生してしまう働き方なのです。解雇規制を弱く(社員を解雇しやすくする)すればSES企業は減りますが、それは問題の根本解決にはならないですよね。
日本の採用市場にSES企業が多いのは、業界の構造的な要因が深く関連している。建設業界同様、「多重下請け(一つのプロジェクトに何社も間に入って手数料を取る仕組み)」があることでピンハネされる構造があることは事実だ。
構造的な問題が理解できたところで、具体的に「IT派遣(SES)」のブラック情報について検証していく。
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