キャメロンなど各国の首相や、多くの企業のCEOはオックスフォードでPPEを専攻しています。歴代のユニオンの代表の多くも学ぶ、まさにリーダー養成の看板学科です。
最初の文字のPが哲学です。日本で学ぶ哲学の科目とは少し異なります。一言でいうと「人類とは何か」という大きな問いに取り組む学問です。英米の博士号をPhDと呼びますが、この最初の文字もPhilosophyですね。この問いの答えを突き詰め、独自の研究哲学を身に付けた証(あかし)です。
イギリスで学ぶ哲学は「コミュニケーション戦略」の使い方と言えます。人は、物事を理解し、分析し、思考する過程をすべて言葉で行います。そして、課題を解き、人に伝え行動を起こしてもらうのも言葉です。
これらの能力を、多量の専門書を批判的に読み、独自の課題と解決方法を構築し、エッセイという論文にまとめます。これがクリティカル思考法です。
PPEでは2週間に1本の割合でエッセイ課題が出されます。課題図書を15~20冊ほど批判的に読み、独自の見解を述べる必要があります。学期は8週間という短期間ですが、その間に70冊位を精読します。1年は3学期なので、単純計算で年間に200冊以上となり、3年後の卒業時には最低600冊以上は読むことになります。
未来のリーダーたちは、先人の残した英知をクリティカルに議論し、独自の課題や解決方法を見つけ論文の執筆に取り組みます。この時間も手間も掛かる、実直な努力を続け、さまざまな問題に対処する基礎力が養われるのです。
結局、日本のリーダーに足りないものは?
イギリスでは専攻のことをメジャー(Major)ではなく、リーダー(Reader)と呼びます。まさに各分野の重要な書籍を読みこなしたことの証となります。
2018年の日経新聞によると、日本の大学生の53%は1日の読書量がゼロという結果でした。先日、日本を代表する大学生にオックスフォードに関する講演をする機会がありました。参加者は英語も堪能でとても熱心です。ところが、専門書を読んだ数をお聞きすると、10冊以下の方も少なくありません。
未来のリーダーたちが、国際交渉のテーブルに着いた時、書籍や論文執筆で身に付けたインテリジェンスの差は、残念ながら大きいと言えます。600対数十。
最終回(第3回)はこのインテリジェンスを、どのようにディベートで磨くのか見ていきます。
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