1989年に、中国政府が民主化運動を武力で鎮圧し、多数の若者が犠牲になったのが天安門事件です。以後、中国では言論の自由は制限されています。ユニオンでは、海外に亡命したリーダーたちを集め、中国では禁じられている話題の討議を毎年行います。さらに2020年にはウイグルの活動家を招聘し、この地域の現状についても討論をしています。
実は、オックスフォードには中国人留学生も多く、いずれ国を代表して活躍する人材です。本国では情報統制されていても、ユニオンでこのような生の情報を聞かされると、現実を直視せざるをえなくなります。
「自由な議論」とは、他人の発言の権利や意見を尊重し、よく聞くことから始まります。ユニオンを快く思っていないチャーチルも、ここで何度もスピーチをしました。ユニオンでは、いつの時代も、未来を担う若者たちが、社会の課題に疑問を抱き、その時代の責任者を迎え討議を行います。
大学でいかにリーダーが育つのか
リーダーとは政治家や、企業のトップだけではありません。われわれが抱えている、身近で大切な問題を率先して解決する人々も同様にリーダーです。環境や福祉、雇用など、あらゆる分野において、さまざまな課題解決のために先頭に立つ人が必要なのです。有史以来、人類は発展してきましたが、それとともに多くの問題を作り続けています。次から次に出てくる新たな課題を、「誰か」が率先して解決する必要があります。
押し寄せて来る課題に対して、危機感を持った昔の賢人たちは1つの良いアイデアを思いつきます「それぞれの問題を解いて見せるのではなく、解き方を次の世代に伝授してはどうだろう」。これが11世紀に大学が始まった理由の1つです。
「物事が予測不可能なら、問題自体の原因を見つける方法を身に付ける。原因を把握したら、これまでの中から最適な解き方を選び、実際に解いてみる。人間は過ちを犯すので、何度でも試みて、いちばん良い答えを導き出すまで続ける」
これを「問題解決能力」と呼び、それをともに学ぶことを目標としました。この訓練は、過去の伝統的に先人が書き記した大量の文献を使い、必死に解決法を考えるものでした。
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