円安・低成長「日本」とウォン高・高成長「韓国」の差 「下がり続ける円」が本当に意味するところ
これが、黒田総裁が円安は差し引きでプラスという理由だ。しかしこれは、持続可能な戦略ではない。日本の貿易収支は、GDPの中ではわずかな割合にしか過ぎないので、貿易だけに頼っても成長は実現できない。さらに、この戦略は極めてリスキーだ。なぜなら、リーマンショックやコロナ禍といった、海外のどこかで何かが起きるたびに、日本はその影響を非常に強く受けることになるからだ。
低迷する日本と成長する韓国の違い
自国が通貨安にならなければ輸出品を売れない国家というのは、労働者の給与を下げて価格を安くしないと製品を売れない企業と同じようなものだ。健全な経済とは、従業員の給与を上げながら、いい値段で製品を売れる企業のようなものだ。生活水準を向上できる成長戦略のカギとなるのは、通貨安ではなく、生産性の向上なのだ。これこそが、日本と韓国の違いとなっている。
現在、円の実質の価値は2012年の水準から29%も低下している。それに対して、韓国ウォンの実質の価値は2012年の水準から7%上昇している。それにもかかわらず、韓国経済の方が優れた数字を残している。リーマンショックの直前の2007年からコロナ禍の直前の2019年まで、日本の国民1人あたりのGDPはわずか7%成長しただけだ。
それに対して、韓国の国民1人あたりのGDPは、その5倍となる35%も成長している。さらに、2007年には、韓国の国民1人あたりのGDPは日本の20%下であったものが、2019年には日本を超え、その差は広がりつつある。
韓国の経済成長を支えたのは内需だ。輸出額も急速に上昇したが、輸入額も急速に上昇した。その結果、GDPの成長に最も大きく貢献したのは、各家庭の消費と企業による投資となった。
誤解のないように記しておくと、韓国は日本よりはるかに、貿易に対して積極的だ。貿易総額(輸出額プラス輸入額)は、韓国ではGDPの78%に達するのに対して、日本は37%だ。これによって、生産性、つまり労働者1人あたりの生産高が上昇し、韓国経済はさらに勢いよく成長できる。しかし、韓国は、内需が低迷しても、貿易黒字(輸出額マイナス輸入額)を毎年増加させて埋め合わせる必要はない。
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