円安・低成長「日本」とウォン高・高成長「韓国」の差 「下がり続ける円」が本当に意味するところ

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為替予想の専門家の多くは、北米およびヨーロッパの中央銀行が現在金利を上昇させている中で日本銀行が低金利政策を続けていることから、円安はさらに進行すると予想している。これによって、債券所有者は、日本と他国とで得られる収入の差が広がる。

そうなると、多くの投資家は日本から他の市場に資金投下先を変えることになる。ここ1年で、1ドル104円から115円まで円安が進んだが、金利の差の広がりがこの重要な要因となっていた。

自国の経済の命運すら決められなくなった

ただ為替予想というものは、外れることもしばしばある。金利の差は、円相場の変動に大きな影響を及ぼすこともあれば、他の要因の陰に隠れることもある。2001年から2013年までの13年間を統計学的に回帰分析すると、金利差は円の価値の変動の80%を説明できていた。

が、2014年から2019年までは、金利差は実質的には円の価値の変動に何の影響も与えていなかった。2020年からは、金利差が再び重要な要因となったようだが、まだそうなってから日が浅いため、今後1〜2年でどれほど重要な要因となるかを推定することはできない。

1つ明確なことがある。金利差が大きな影響を与える場合でも、日本銀行は黙って見ているしかない。10年物の国債の金利はわずか0.16%という、すでに極めて低い水準となっているので、日本銀行はこれ以上金利を大きく下げることはできないのだ。金利差を本当に動かすことになるのは、アメリカおよびヨーロッパの中央銀行がどのような政策を行うか、そしてそうした動きに市場がいかに反応するかだ。

アベノミクスは、円という通貨を弱体化させただけではなく、日本が自国の経済の命運を自国で決める力をも弱体化させてしまったのである。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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