【産業天気図・海運業】足元活況も、来春以降の景況感は一段後退へ。運賃値上げ効果一巡、コンテナ船の需給バランス乱れも懸念
10年10月~11年3月 | 11年4月~9月 |
海運業の景況感は10年10月~11年3月は「晴れ」だが、11年4月~9月は「曇り」に一段後退する見通し。超大型コンテナ船の竣工による需給バランスの崩れなどが業界主要企業の業績にとって重荷になる。
日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社のコンテナ船部門は運賃値上げに成功し黒字浮上急。コンテナ船の1~3月は例年スラックシーズン(裏期、不需要期)だが、11年1~3月期は前年同期よりも全体的に貨物量が増え、大幅な増益となりそうだ。
ただ、その後の11年4~9月となると、今10年4~9月の運賃値上げが高水準だったことや、超大型コンテナ船の竣工による需給バランスの崩れが懸念材料で、強気にはなれない情況。コンテナ船比率の高い川崎汽船はコンテナ船の部門利益に全体の利益が左右されやすい。
前期に赤字転落した自動車船も荷動き回復で黒字化している。日本から米欧への自動車輸出量は生産調整で10月以降減る見通しだが、現在では日本発の「日本出し貨物」がそう多くないことから、影響は大きくなさそう。自動車船については利益水準がまだ低いために、11年4~9月も若干ながらさらに持ち直す公算がある。日産専用船を子会社化した商船三井は日産車の世界的な自動車荷動きに左右されがちだ。同様に、日本郵船はトヨタ車の動向に左右されやすいことは最早周知の事実。
鉄鉱石や石炭を運ぶバラ積み船は、山元(鉄鉱石採掘会社)と中国ミル(鉄鋼メーカー)との価格交渉の荒波に飲み込まれて運賃市況が6月下旬から7月にかけて大きく落ち込んだが、8月に入ってから回復顕著。10月以降も大崩れすることはないだろうというのが大方の見方だ。ただ、11年4~9月についてはコンテナ船同様、新造船の大量竣工による需給悪化懸念がくすぶり、部門利益が減る可能性がある。バラ積み船への先行投資で7期連続利益首位の座を築いた商船三井にとって、バラ積み船の需給悪化懸念は特に頭の痛い問題だ。