SUBARUと三菱「電動化」で目指す方向の決定的な差 東京オートサロンで発表されたEV2台の可能性

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K-EVコンセプトXスタイルのリアビュー(筆者撮影)

さらに近年は、軽自動車でも衝突安全基準が年々強化されていることもあり、ドア自体の強度も上げなければならない。必然的にスライドドア搭載車は、一般的なドアを採用するモデルより車重が重くなる傾向にある。そして、車体の車重が重くなるとBEVの場合、バッテリーの容量を上げないと走行性能や電費に影響するが、バッテリー自体も容量が大きいほど重量が増すという、痛し痒し的な課題がある。当モデルは、こうした「軽量化」という課題をクリアするために、一般的なドアを採用しているのだ。

ほかにも新型の軽BEVでは、災害時などで停電した場合、車載バッテリーに蓄えた電力をV2H機器を介して家庭へ供給するなど、非常用電源としても活用できるという。三菱は「アウトランダーPHEV」や「エクリプスクロスPHEV」などで培った技術があるため、これらのノウハウを軽BEVにも十分転用が可能だという。面白いことにアウトランダーPHEVの駆動用バッテリーも総電力量は20kWhと、新型の軽BEVと同じだ。こちらは、ガソリンエンジンとモーターで駆動方式を使いわけるハイブリッド車であるから、単純に同じとはいかないだろうが、V2Hとして使う際の電気量には十分期待が持てる。

200万円台から実用性を備えたBEVが選べる未来

具体的な価格についても、新型の軽BEVはまだ未公表だ。だが、三菱と日産は、2021年8月発表時に「実質的な購入額が約200万円からとなる見込み」としている。この約200万円とは、BEVやPHEV、FCVなどに出される国や自治体からの購入補助金などを2021年度と同額と想定し、車両本体価格から差し引いた額だ。例えば、国の制度では、現在、CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金を実施しており、令和3年(2021年)度補正予算における軽BEVの例でいえば、令和3年11月26日以降に新車新規検査届出をした車両の補助金は上限40万円。それに加え、「車載コンセント(1500W/AC100V)から電力を取り出せる給電機能がある車両」、または「外部給電器やV2H充放電設備を経由して電力を取り出すことができる車両」であれば、上限50万円が出る。そう考えると、三菱と日産の軽BEVは、200万円台半ばくらいからの購入価格ということも十分考えらえる。

三菱は、以前にも2009年に軽BEVの「アイミーブ(i-MiEV)」を市場投入した実績を持つ。残念ながら、同モデルは2021年3月に生産終了となったが、現在も派生機種として軽商用バンBEV「ミニキャブミーブ」をラインナップする。BEVの軽自動車については、長年のノウハウを持つメーカーなのだ。ひさびさの乗用車タイプとなる新型が、どんなスペックや乗り心地、利便性などを備えるのかが、今から気になるところだ。

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