相模鉄道、悲願の東京乗り入れ 懸案は横浜駅の地盤低下

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 相鉄は、横浜-海老名の本線、二俣川-湘南台のいずみ野線を持つ私鉄大手。旅客線は計35・9キロメートルと大手で最も路線距離が短いが、1日の輸送人員は約63万人に上り輸送効率は高い。相鉄ホールディングスの鳥居眞社長は「当社の路線はマグロなら大トロばかり」と言う。乗客の7割弱が横浜駅を利用し、横浜で降りた人の6割以上がJRなどを利用し東京方面へ向かう。沿線に大型レジャー施設などがなく、典型的な“片側通行”の通勤・通学電車だ。

相鉄が首都圏で行った調査では、大手私鉄のうち相鉄の知名度は最低レベル。路線が神奈川県内に限られ、他社線乗り入れも行ってこなかったためだろう。「相互直通により利便性、速達性が向上すれば、沿線に住もうとする人が増え、知名度も上がる」と鳥居社長。流通など鉄道以外の事業への好影響も期待できる。

若者流入せず進む高齢化 横浜駅乗り換えが壁

相鉄の輸送人員は近年低迷している。年間輸送人員がピークをつけたのは1995年度。その後9年連続で減少。いったん持ち直したものの、現在、再びマイナス傾向にある。神奈川県内を走る大手私鉄、東急、小田急電鉄、京浜急行電鉄の輸送人員が基本的に増加基調にあるのと比べ、相鉄の苦戦が目立つ。

この要因の一つに沿線の急ピッチな高齢化がある。相鉄沿線の中心部分を占めるのが、二俣川などの駅がある横浜市旭区。旭区は65歳以上の高齢化率が24・1%と市内で最も高い(横浜市平均は19・6%)。それまでの農地や山林が戦後、住宅地として一気に開発され、急激に人口の増加した地域が多い。

たとえば、相鉄が分譲した住宅地に住む50代男性が通った地元の小学校は、1学年8クラスだった。プレハブ校舎を造っても教室が足りず、午前・午後に分けた2部授業が行われていた。戦後すぐの混乱期ならともかく、60年代の話で、この沿線の人口膨張ぶりを象徴する。現在は、主に50~60年代に行われた大規模開発で沿線に移り住んだ人々のリタイアが加速。一方で都心回帰の流れがあり、若年層の流入は増えない。結果として生産年齢人口、輸送人員の減少を招いている。


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