相模鉄道、悲願の東京乗り入れ 懸案は横浜駅の地盤低下
横浜駅周辺の商業施設は、みなとみらいなどに比べ、平日と休日の客数の差が小さいことも特徴だ。鉄道の乗り換え客を吸収できる地の利のよさで、商売が成り立ってきた。だが、他エリアとの競争激化に加え、相鉄横浜駅の乗降客減少が逆風になる。JR、東急のビル建て替え計画が動き出したが、街全体が統一された方向で再開発に向かわないと、時代に取り残されかねない段階に来ている。“西口の大家”相鉄への期待も大
きい。
相鉄の賃貸事業は、商業ビルへの依存度を下げることも課題だ。現在は事業の85%程度が商業ビルだが、「景気の変動を受けにくいオフィスの比率を3割程度にまで上げたい」と稲本社長。昨年は東京都心で既存の賃貸ビル2棟を取得した。
住宅関連では大規模開発がほぼ終了した。可能性が残るのは、駅前に農地が広がる、いずみ野線ゆめが丘駅周辺だが、地元の賛同が得られず、見通しは立たない。今後はマンション分譲とともに、賃貸マンション事業に力を注ぐ。これまでに既存物件5棟を取得。「総額150億円をメドに取得していく」(久保田豊・相鉄不動産社長)。購入物件は東京都心が中心。相鉄沿線は都心に比べ賃料が低く、採算が厳しいからだ。
鉄道、不動産と並ぶ柱が流通。沿線を中心に食品スーパーを展開する相鉄ローゼンがその核だ。消費不況で苦戦するが、伊藤英男・相鉄ローゼン社長は「食品スーパーは沿線価値への貢献が大きい」と言う。丸紅との提携で商品供給力や人材を強化、活路を見いだそうとしている。
鉄道沿線の住民ニーズをセットで取り込む鉄道会社のビジネスモデルは、人口減少社会の到来、地価の下落、沿線の開発余地縮小など、あらゆる面で崩壊。新しいモデルは、まだ明確になっていない。相互直通というチャレンジを機に相鉄がどんなモデルを目指すか、注目したい。
(安西達也 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済2010年10月2日号)
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