アメリカの株価は本当に下げ止まったのか? 過去の経験則が今回は当てはまらない可能性
このうち、①に関しては、そうヤキモキする必要はないだろう。どんなに遅くとも、3月15~16日に開かれる次のFOMCでは結果が出るからだだ。
②についてはもう少し時間がかかるかもしれない。もちろん3月のFOMCで明確に方針が示されればよい。だが「次の利上げは今後の状況次第」という、あいまいな答えしか返ってこないこともありうる。その場合は答えが出るのも、その次の5月3~4日のFOMCまでお預けだ。
③ のバランスシート縮小に関しては、逆に早い時期に明確な方針が示されることになりそうだ。バランスシートの縮小は、仮に再購入を行わないという消極的な方法でもかなりのペースで進むと見られており、それだけで十分な金融引き締め効果があるとされている。
パウエル議長は利上げのペースを穏やかなものに抑えるためにも、早期にバランスシートの縮小を決定することも考えられる。いずれにせよ、こうした方針はそれなりに大きな痛みも伴う。そのときには株価も一段と値を切り下げると思われるが、それでも先行きの不透明感が払拭されれば、相場が下げ止まる可能性も高いと見てよいのではないか。
景気減速も問題になれば、株価の下げもきつくなる
もっとも、 市場はFOMCだけに注目しているわけでもない。仮に金融政策に対する不透明感が払拭されたとしても、まだ相場が下落を続けるシナリオについても考えておく必要がある。
警戒すべきは、インフレのさらなる高進と景気の急速な減速だ。サプライチェーンの混乱と労働力不足問題はなかなか収まらず、賃金上昇圧力は高いままだ。もし1月と2月の消費者物価指数が、前年比7%という39年ぶりの高い伸びを記録した昨年12月よりもさらに上振れするようなことがあれば、FRBは金融引き締めのペースを一段と早めざるをえない。その際は市場もそれなりの反応を見せるものと思われる。
またサプライチェーンの混乱と労働力不足の問題は、景気回復の足かせとなる恐れも高い。原材料の調達や人手不足で生産のペースが鈍ってくることがあれば、それはそのまま景気の下押し圧力となる。1月27日に発表された昨年10~12月期のアメリカの国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比6.9%増と、予想を上回る伸びとなった。
だが、これは主に在庫の積み増しによってもたらされている。新型コロナのオミクロン変異株が出現、企業が万が一の場合に備えて在庫の積み増しを加速させ、これが需要を大きく押し上げたというわけだ。
もっともオミクロン変異株で重症化する可能性が低いとの見方が強まる中、こうした在庫積み増しに対する需要は急速に衰えそうだ。今後発表される1月以降の経済指標がこうした理由で軟化する可能性は高く、それが景気の先行きに対する不安を一段と高めることになれば、新たな売り要因となることも十分に考えられる。
経済がしっかりとしたペースで伸びている時には、金利の上昇もさほど気にならない。だが、回復のペースが鈍ってくると、金利の上昇が改めて重石となる。またこの先景気が大きく落ち込んでも、今までのようにFRBの積極的な金融緩和や政府の財政出動には期待できないことの影響も大きい。将来的に景気の減速が問題視されるようになってくれば、相場が下げ止まるのもかなり先となるかもしれない。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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