アメリカの株価は本当に下げ止まったのか? 過去の経験則が今回は当てはまらない可能性

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もちろん、相場というのはいつまでも下がり続けるものではない。とくにアメリカの株式市場では、これまで急落局面で勇気を出して買いを入れておけば、長期的には利益を得ることができたのも事実だ。

ただ、今回の下落局面は、いくつかの点で過去の経験則が当てはまらない状況下で起きている可能性も高い。2020年春に新型コロナウイルスが世界的に大流行し、景気が急速に落ち込んだ際にFRBが行った金融緩和とアメリカ政府が打ち出した経済政策は、どちらも過去に例を見ない大きな規模となったし、それを受けた株式市場の上昇も、常軌を逸したペースで進んだことも間違いないだろう。そうした結果として足元ではインフレが急速に進み、昨年12月の消費者物価指数は前年比で7%と、39年ぶりの高い伸びとなっている。

異例の状況下で始まった下落局面だけに、これがいつまで続き、どの水準で下げ止まるのかを予想するのはそう簡単ではないが、この30年の間に、アメリカの株式市場は2度の大きな下げを経験している。

1度目は2000年から2002年にかけてだ。ちょうど1990年台後半のハイテクバブルがはじけたところに2001年の「911テロ」が重なった。2度目は2008年から2009年にかけて、サブプライムローン問題の深刻化が金融危機に発展、「リーマンショック」につながった時である。前者は直近の高値から約46%、後者は約53%下落した。今回はいったん反発したが、最終的に下落がこれらに匹敵するものとなることがあっても、何ら不思議ではないかもしれない。

売り材料が出尽くすのは、どのタイミングなのか

そうした中でも、あえて売りが出尽くすタイミングを考えてみよう。それは、やはりFRBの動向がきっかけとなる可能性が高い。相場というのは、先行き不透明感の高いときにいちばん売りが出てきやすいものである。

どんな悪い材料でもいつかは出尽くしとなるわけであり、最悪の材料を織り込んでしまいさえすれば、それ以上市場の不安は高まらないし、売りも出てこなくなる。結局、パウエル議長がFOMC後の会見で、金融政策の先行きについて、明確な見通しを出すことができなかったのが売りを加速させるきっかけとなったのを見ても、それは明らかだ。

逆に言えば、そうした不透明感が払拭されれば、市場は下げ止まることになる。では一体、何がきっかけになるだろうか。ここで議長が会見で明確に答えることができなかったポイントについて、改めて整理してみたい。市場が特に材料視したのは、次の3点だ。

① 3月のFOMCで、50bp(0.5%)の利上げに踏み切る可能性はあるのか
② 利上げ開始後は「2会合に1回」という穏やかなペースでの利上げになるのか、それとも会合の度ごとに利上げを行うのか
③ 利上げが始まった後に着手するというバランスシート縮小の開始は、具体的にいつからになるのか

次ページ3つのうち最も重要なのは?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事