14の精神疾患と闘ってきた47歳彼女の壮絶な半生 ライター歴24年、初めての単行本に込めた願い

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「飲酒のせいで体調が悪くなり、膵炎の疑いで検査を受けたんです。検査を受けたらたしかに急性膵炎ではあったのですが、後に膵臓がんであることが判明しました。医者いわく飲酒やドラッグとは関係なく発生したがんだそうです」

膵臓がんは非常に見つかりづらいがんだ。見つかった時には手遅れということも少なくない。

結果的に、アルコール依存症だったことが膵臓がんの発見を早めた。

かかりつけの医者も、

『なんて悪運が強い』

と驚いていた。

瀧本さん初の単行本『アイアム精神疾患フルコース』

実は、膵臓がんが判明した時はすでに、『アイアム精神疾患フルコース』の執筆ははじめていた。インタビューの際に同席した、担当編集者に話を聞くと、

「『今日、病院に彼氏まで呼ばれたからなんだと思ったら、膵臓がんでしたわ』みたいな軽いメールが送られてきてビックリしました。瀧本さんには『本を出しても、やりきったと思って、死なないでくださいね』と伝えました」

と語ってくれた。

6時間半の大手術になった。

結局、膵臓の4分の3を切除した。

「全身管だらけの状態で、呼吸をするだけで尋常じゃない痛みが全身を襲いました。薬をたくさんやっていた人は、麻酔が効きづらくなるらしいです。そして先程説明した残遺性障害で幻聴も聞こえました。地獄のような体験でした」

「とにかくみんなに生きてほしい」

とてもつらい日々だったが、だが瀧本さんは生き残った。手術の結果、あまりアルコールが飲めない身体になってしまった。退院後は幻聴の悩みもずいぶんやわらいだ。

(写真:筆者撮影)

ただもちろん、健康体になったわけではない。医者には、

『膵臓がんの5年後の生存率は10%です。その期間に脳梗塞や脳血栓を起こしたら100%死にます』

と宣告されている。

本連載が『「非会社員」の知られざる稼ぎ方』(光文社新書)として書籍化されました。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

「身体はそんな状態ですし、いまだにさまざまな精神疾患に悩まされ続けているんですけど、でも私は生きています。

『アイアム精神疾患フルコース』はそんな私の闘病記です。どんな感想を持ってもらっても構わないと思っています。『似たような経験をした』という人には生きてほしいし、『嫌悪感を抱いた』という人は馬鹿にしながら生きてほしい。『私のほうがもっとつらい』という人は、精神科や誰かに思いを話して生きてほしい。

とにかく、みんなに生きてほしいですね」

ライターとして念願の1冊目の単行本を上梓した瀧本さんだが、これからはどのような仕事をしていきたいと思っているのだろうか?

「今までは私生活や身体の切り売りのような仕事が多かったので、今後はゼロからモノを生み出すようなものが書けたらいいなと思っています。やっぱり自分の経験が生きる、メンタル系の作品に関わっていきたいですね」

と瀧本さんは明るく笑いながら語った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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