派遣先の病院では、2大勢力(第3シーズンでは東帝大学対西京大学)が権力争いをしていて、その争いに巻き込まれるが、本人は大好きな手術をして患者の命を救うことだけに邁進する……。毎シーズン、最終回は、大門未知子が病院を去るシーンで終わります。
劇中に流れるBGMに“口笛”が用いられ、主人公が活躍するところには、お決まりの音楽が流れます。
マカロニウエスタンの特徴は、主人公に権威はなく、自らの腕だけで悪者の権力者を倒すこと。また人物像に一癖も二癖もあって、清廉な人物としては描かれません。同じ勧善懲悪でも、公明正大な権力者が悪者を懲らしめる「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」とは、そこが違います。自分たちと同じような権力のない人が、権力ではなく専門技術で悪者を懲らしめてくれる。そこに、視聴者はスカッとするわけです。
「ドクターX」でも“フリーランス”という組織社会ではいちばん下として扱われる主人公が、すご腕で権力者を圧倒するという構図が何ともすがすがしい。毎回、後半の手術シーンを楽しみに見ている視聴者は多いはず。
しかも、主人公は、会社では弱い立場にあることが多い女性。アルバイトから中間管理職まで、組織で働いている人であれば、皆、このドラマを見て、スカッとしているはずです。
特に30代から40代の女性管理職と話していると、このドラマの話になることが多く、中には「日本のドラマはめったにみないけれど、『ドクターX』だけは見る」という人もいました。友人の女性外科医は、「現実の手術と違っているところが多いので、つっこみどころ満載だ」と言いながらも、よく見ているとのことでした。
この年代の女性管理職は、権力争いや社内政治に参加しなくてはならないし、組織の内部がいろいろ見えてくる頃なので、余計に“フリーランスの外科医”がまぶしく感じられるのかもしれません。
失敗を恐れる日本人
「ドクターX」が20~40代の幅広い社会人層に人気があるもうひとつの理由は、主人公が「失敗しないこと」を強調しているからだと思います。
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