「奨学金880万円」借りた女性が東京で選んだ仕事 東京に住んで気づく「本当にしたかったこと」

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もともと、両親が映画好きで実家はWOWOWを契約していたこともあって、志保さんは子どもの頃から映画好きだったという。しかし、地元には映画館はなく、当然、単館系作品を上映する名画座も存在しなかった。そんな彼女が「ジャック&ベティ」に吸い寄せられ、より映画好きになっていったのは、ある意味、まっとうな流れといえよう。

大学時代には一風変わったバイトも

名画座通いと同様、「地元では体験できない変わったことがしたい」……と志保さんが思ったのかは定かではないが、アルバイトも一風変わった場所でしていたようだ。

「2年生の頃は、出版社の雑誌の編集部で働いていました。それ以外にもいろんなところで働いていて、大学の講義がある期間は週3日程度、朝6時〜8時までカフェでバイトして講義に出たり、夏休みになると朝9時から深夜まで働いたりもしていました。長期休暇は、月に10万円は稼いでましたね。ただ、親からは『扶養の範囲で』と言われていたので、年間で100万円ぐらいだと思いますけど」

その後、大学を卒業した志保さんは、1社を経て現在も勤務する会社に中途で入社することになる。名画座通いをしていたことを考えると、映画会社なども志望しそうだが……尋ねると、「一時期考えていたこともありましたけど、やめたんです」とのこと。

「大学時代はひとりでいることも多くて、そのせいか、鬱っぽくなった時期もあったんです。そんな時、自分を支えてくれたのが本でした。映画よりも、寄り添ってくれている感じがしたんです。だから、本に関わる仕事がしたいと思うようになって。

あと、友人の誘いで、映画作りに関わったことも影響しています。映画はひとりで見られるけど、作るのは大人数じゃないですか。だから、『自分には合わないな』って気づいたんです。今までに触れてきた数は映画のほうが多かったけど、仕事にしたいな、できそうだなと思ったのは本だったというか。自分としても、意外な発見でしたね」

そんな、本に関わる現在の日々は、給料こそ、そこまで高くはないものの、「それでも今の仕事は楽しいです」とのことだ。

「高校生までは将来のことなんて、何にも考えていませんでした。でも、東京の大学に来たことで、今の仕事につきたいと思うようになった。ずっと地元に住んでいたら、名画座通いも出版社でのバイトも自主映画製作の手伝いもできなかっただろうし、そうなると、今の仕事も浮かばなかっただろうなって。選択肢が増えたという意味では、奨学金もらっておいてよかったなとは思います」

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