「奨学金880万円」借りた女性が東京で選んだ仕事 東京に住んで気づく「本当にしたかったこと」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

地元を出て、東京の大学に進学したことによって、自分のやりたいことを発見し、今はやりたかった仕事をしている。それは、奨学金を借りたことでかなったといっても過言ではないだろう。

金銭感覚に変化はあった?

もっとも、そんな”美談”めいた話は、奨学金返済にはなんら関係のない事情である。媒体特性上、大人の読者が多いことは理解しつつ、本連載は「高校生が参考にできる、リアルな事例を積み上げる」ことを目的のひとつとしているので、あえてねちっこく、お金の部分に切り込んでいきたい。

まず現在、志保さんは毎月約3万7000円を返済している。結果、社会人生活のなかで返済に困ることもあったようだ。

「今は給料も上がったので『月々4万円弱の出費はデカいけど、思ったより大丈夫』という感じです。ただ社会人1年目の時は、給料もそんなにもらえていなかったので『デカい出費だな』と思っていましたね」

小さくはない出費を抱える今、志保さんは切り詰めた生活をしている……のかと言うと、そういうわけでもないようだ。

「私、節約ができないんです。服とか、高い買い物はさすがに控えていますけど、食費を切り詰めたりすることはできないし、しかも、在宅勤務が多いので、ついついUber Eatsとかも頼んじゃう。そのせいか、クレジットカードの支払いも、家賃や奨学金とは別で毎月15万円くらいあります。『貯金しなきゃな』とは思っているのですが、一回上げた金銭感覚を下げるのって難しいんですよね」

金銭感覚はさまざまである。ゆえに、月の支出がいくら以上なら散財しているなどと、わかりやすい基準で判断することはできないが、「自分でもそこまで使っている気がしない、何に使っているのかわからないんです」とのことで、どうやらちょこちょこ小さな出費を積み重ねるタイプらしい。

さて、ここで出てくるのが、志保さんが「借りすぎた」とインタビュー冒頭で語った奨学金の金額である。大学在学中、志保さんは第1種、第2種を合計して月々18万4000円借りていた。そこに、バイト代が平均で8万円ほど加わる。合計すると26万円強という数字になり、これは、志保さんの新卒時代の手取りよりも多い数字だった。

もちろんここから、授業料の自身の負担分や、家賃、交通費などを支払うので、全額を自由に使えるわけではなかったが、それでも毎月10万円程度は生活費や娯楽費に使っていたようだ。

【2022年1月27日14時25分 追記】記事初出時、生活費・娯楽費の計算に誤りがあったため上記のように修正しました。

この数字が多いか少ないかは人によって判断が分かれそうだが、「友達と旅行に行ったり、わかりやすい散財をした記憶はないんですよ」とのこと。

大きな出費をドカンとするより、小さな出費をコツコツ積み重ねるほうが記憶に残りにくいし、結果的に散財にもなりうる……という教訓話を、志保さんは地でいっているのかもしれない。

お金というものは概して、使うのは簡単な反面、稼ぐのは難しいものだ。そして、そのことを親や教師が教えてくれるとは限らない。

どの程度バイトできるかは、学業の忙しさにも影響を受けるため、実際に大学生活が始まる前に想像するのもなかなか難しいかもしれないが、今後奨学金を借りようと考えている高校生は、志保さんの例を参考にしてみてほしい。

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。
千駄木 雄大 編集者/ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT