最新!「内部通報の件数が多い100社」ランキング 3位はPPIH、2位はセブン&アイ、では1位は?

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従来も述べているが、この内部通報の件数はどの程度が適切なのか一般に使われている基準はない。ただ、『CSR企業総覧』編集部では2011年度からこのデータを収集してきた経験から、従業員数と対比するのが一つの見方であろうと予想している。

たとえば、1位の日産自動車の2020年度の単独従業員数2万2827人を件数1166件で割ると1件当たり19.6人となる。参考までに上位の製造業では6位の日立製作所(639件)は単独従業員数2万9850人なので1件当たり46.7人。同様にすると、8位トヨタ自動車は114.3人、9位パナソニックは103.5人、15位AGCは17.9人、17位日本製鉄は78.9人、18位エーザイは8.1人、同じく18位ソニーグループは8.0人、20位ホンダは102.2人となる。

われわれは「1年間で100人に1人が通報する」環境が、内部通報制度が機能している目安の一つとみているが、通報1件当たりの従業員数は100人未満が100社中78社、200人未満が同じく96社だった。2019年度対象の調査のランキング発表時は100人未満が100社中78社、200人未満が同じく94社だったので、2020年度は1件当たり100人未満の会社数は変わらないが、1件当たり200人未満の会社数は、前年度に比べて若干増えている。

ちなみに、CSR調査によると冒頭で挙げた三菱電機の2020年度の内部通報件数は65件(前年度比2件増)、単独従業員数は3万3906人なので1件当たり521.6人だ。上記の目安で判断すると、同社の内部通報制度が機能しているとはとてもいえない水準である。

ただし、これも以前から述べていることだが、単独従業員数を基準にすることは課題も多い。通報可能な対象者はグループ会社を含む場合もあるし、正社員以外のパートやアルバイトが含まれる場合もあるからだ。通報可能な人数が明確でないため、単独の従業員数を使って算出した値はあくまで参考データであることには気をつけていただきたい。

やはり全社を挙げた制度浸透の取り組みが重要

ここ数年、社内窓口担当者の負担回避策として、IHIのような社外専門機関への窓口の一本化や今回ご紹介した日産自動車の「SpeakUp」のようなシステムの構築を提案してきた。

これらに加えて、昨年に続いて本年も紹介したヤマトホールディングの件数増加とその理由――身近な問題に対応した相談窓口を設置すること(2020年度)やパート社員を含めたグループ内全社員へ内部通報制度の浸透を図るために通知の配信やポスター掲示(2019年度)――は、全社を挙げた地道で継続的な認知向上の取り組みが制度を機能させるのに重要であることを示していると考える。

『CSR企業総覧』編集部では、今後も内部通報件数のデータを収集し、各社の動向を伝えていきたいと考えている。コロナ禍でも不祥事防止への寄与が考えられる内部通報制度の進展に期待する。

佐々木 浩生 東洋経済『CSR企業総覧』編集部

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ささき ひろお / Hiroo Sasaki

1999年東洋経済新報社入社。上場企業の資本異動データの収集・編集、データベースの販売、『一橋ビジネスレビュー』編集などに携わった後、2019年版から編集に携わる。

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