iPadも刷新へ、ただし「衝撃的進化」は期待薄 iPhoneとの機能面での共通化が進む見通し

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また通信速度についても驚きがあった。米国に渡ってからDSLの環境でインターネットに接続していたが、下り6Mbps、上り1.5Mbps以上の速度は出なかった。現在ケーブルテレビのインターネットに切り替えたが、それでも下り20Mbpsが限界だ。しかしiPadのLTE接続では、下りで30Mbps以上の通信ができた。こちらも、パソコンのネット体験とは雲泥の差だった。

ディスプレイ、通信速度という、日常的なコンピューティング環境に影響する2つの要素において、2012年春のiPadは、その当時の筆者のパソコンの体験を大きく上回ったのだ。

もちろんこうした衝撃は、普段の環境次第だ。例えば日本で光ファイバーの回線を使っていれば、LTEの通信速度以上に通信量制限や価格に目が向くだろう。しかし米国での筆者の体験の中では、この第三世代iPadは、体験が大きく変わったデバイスだった。

残念ながら、その衝撃を受けた筆者も、モバイルデバイスをiPhone 6 Plusにまとめようとしているのは事実だ。

次のショックとは?

次のアップルの新製品発表イベントで、筆者が受けたような大きく体験が変わる「ショック」は、訪れるだろうか。筆者の予測では「No」だ。

iPadシリーズはより「iPhoneとの共通化」が図られていくだろう。ゴールドの新色、デザインの小幅な変更、Touch ID搭載、A8搭載、薄型化などが予測されているが、これらをすべて満たしたとしても、iPhone 6が遂げた進化のお裾分けのような状況を脱しないだろう。

またMacについても、既にアナウンスされておりパブリックベータも展開している「OS X Yosemite」は、iOS 7で行ったデザイン変更を踏襲し、シンプルさを保ちながら、クリアでカラフル、そして機能的なインターフェイスへと進化している。前述の通り、iPhoneに着信した通話を受信できたり、書きかけのメールをiPhoneから引き継いで編集すると行った、iPhoneとの深い連携が図られている。

Yosemiteに合わせて、これまでハイエンドノートブック型のMacBook Proにしか用意されていなかったRetinaディスプレイを搭載するMacのラインアップが拡大されることも期待できる。オールインワン型デスクトップのiMacを筆頭に、MacBook Airシリーズへの搭載も待望だ。またアップル純正のディスプレイのRetina化にも要望がある。

もちろんiPadもOS X Yosemiteにしても、新しいMacについても、様々な面でこれまでよりも快適になることは確かだろう。しかしこうした順当な進化からは、「ショック」を受ける事はできない。

たとえば、タブレットとノートブックパソコンのハイブリッドモデルや、より薄型でバッテリ寿命の長いモデル、家庭のテレビなどとの連携を簡単に行えるモデル、実用的な3D対応、ビーコンやGPSなどの位置情報を活用する機能、カメラを使ったインターフェイスなど、既に他のメーカーが行っていたり、考えているアイディアだけでも様々な驚きの体験を作り出すことができるはずだ。

より深いクラウド活用によるスマートフォンとの連携や、家の中、オフィスの中に存在しているという場所性を生かした機能、テレビなど他のメディアとの融合など、現在のアップルらしい、現実的でしなやかな体験に、期待していきたい。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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