部屋探しで「オトリ物件」が排除される驚きの未来 「不動産ID」が導入された不動産業の将来を予想

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「ようこそAI不動産へ、どのような住まいをお探しですか?」

「通勤時間は1時間以内。広さは3LDK以上で、妻と私の専用ワークスペースがほしい。住居費として支払えるのは月額●●万円以内。太陽光発電や蓄電システムを装備して、エネルギー消費量もZEH以上……」

Bさんが思い付くままに希望条件を挙げていくと、AI不動産は音声認識で希望条件を書きだし、優先順位を付けながら自動的に整理していく。

一昔前なら、あちらこちらの不動産物件検索サイトにアクセスして自分で物件探しをしなければならなかった。しかも、オトリ物件とかツリ物件と言われる消費者を誘い込むニセ情報が紛れ込んでいたため、2022年にNHKでドラマ化された漫画『正直不動産』(小学館)のような信頼できる宅建業者を探すのにも一苦労だった。

しかし、2022年に「不動産ID」が導入されたことで、オトリ物件やツリ物件を排除しやすくなった。当初は物件情報に不動産IDを表示することに消極的だった宅建業者も、情報の信頼性を示すために不動産IDを活用する動きが広がった。その結果、どの不動産検索サイトでも掲載される物件の数や中身に違いがなくなり、「物件数ナンバー1」といったテレビCMも姿を消した。

【証言1】首都圏の売り出し物件数は20~30万件と言われるが、不動産検索サイトには約100万件もの物件情報が掲載されている。不動産IDによってオトリやツリなどの物件情報が排除されるようになることで、広告収入が大幅に減ることを懸念する検索サイト運営会社もいるかもしれないが、消費者利益のためにも透明化されるべき。(野口真平イタンジ代表取締役)

「レインズ」が一般公開されたら…

不動産業界では長年、宅建業者間で物件情報を交換するため1980年代に構築した統合データベースシステム「レインズ」の一般公開を拒んできた。しかし、広告料を払って物件情報を検索サイトに掲載するよりも、レインズを公開して不動産情報サービス事業者から手数料を得たほうがコスト削減にもなる。

その結果、すべての売買・賃貸物件が不動産IDにひも付けられて検索できる「不動産データバンク」が構築され、AI(人工知能)などのテクノロジーを活用して最適な物件を自動検索して提案する「AI不動産」が続々と登場してきたわけだ。

【証言2】不動産IDに基づく不動産データベースが構築できるようになれば、検索サイトも物件数の勝負ではなく、ユーザーニーズに対応したサービスを提供できるかどうか、アプリケーション層の勝負になる。(井上高志ライフル社長)
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