例文で見た通り、翻訳のレベルは上がっていますので、単に情報を理解してもらうために翻訳をするのであればおそらく読み書きで英語のスキルは求められなくなるでしょう。しかし一方で文章というのは意味さえ伝わればいいというものでもありません。
例えばですが、「How are you?」という言葉は本来「あなたはどうですか=元気ですか?」という意味です。しかし突然「元気ですか?」という挨拶をする日本人は私の知るかぎりアントニオ猪木さんくらいで、他にはあまりいませんね。
このくらい一般的な言葉であればAIは学習していて「こんにちは」と訳します。ただ、これがビジネスの場であればどうでしょう。おそらく「こんにちは」といきなり挨拶をする営業マンがいたらざわつくのではないでしょうか。
この場合「いつもお世話になっています」が一般的でしょうか。そしてこれをAIが翻訳すると「Thank you for your help」となるわけで、今度はいきなり第一声でそんなことを言われた英語話者界隈がざわついてしまいます。
日本独自の言い回しと英語独自の言い回し
もう1つ例文です。
I hope that your company is doing well.
さて、これはもとの日本語は何だと思いますか?
「貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」です。大切なビジネスレターの書き出しでよく使われる表現ですね。一方英語のレターでいきなりこんなことを書く人はいません。
日本語には日本文化のバックグラウンドがあり、それに沿った表現が多数用意されて、知らず知らずに状況に応じた言葉を使っています。同じように英語にも英語の文化と豊かな表現があり、これらは一致している場合もありますが、食い違っているケースも多々あるでしょう。それが反映されていないと「なんとなく変」な文章になってしまい、いいことは言っているのでしょうが、腹にストンと落ちるようなメッセージにならないのではないかと思います。
ビジネスの報告をする時、対立する意見を持つ人と意見交換をする時、あるいは異性に交際を申し出る時、こうしたシーンをAIに任せる気にはならないです。これってテクノロジーの問題なのかというと、そうではなく「場の重要さを理解する」そして「相手を思いやる」ということと関係しているのだと思います。ここについてはAIが人間においつくことはないような気がします。
一方、語学学習の方法も単語を知っているかどうか、文法が正しいかということもさることながら、異なる文化の理解や場面に応じた表現を理解することが、より一層意味を持つことになるのではないでしょうか。
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