「ブランド=高額品」と考える日本人に欠けた視点 コロナ禍で激変した消費者の心のつかみ方

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川島:地方発のプロジェクトは、以前は東京のクリエーティブディレクターやデザイナーによって提案されたモノをそのまま作り、発表して終わり、というものが非常に多かった。今は本気で自分の土地をよくしたいという地元の人が、ブランドを育てています。地元のキーマンを育てることが大切です。

同時に発信力を磨くことも求められます。ブランドを立ち上げどんなに素晴らしい製品を作っても、消費者に届かなければ魅力を伝えることができない。今はSNSを活用したマーケティングが広がっていて、場所を選ばず誰でも発信できるようになりました。伝えたい人に着実に伝え、理解してもらうことが重要です。

人の「熱量」と「志」がブランド成長のカギになる

――ブランドが成功し続けるために必要なことは何でしょうか。

『ブランドはもはや不要になったのか』(KADOKAWA)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

川島:人は面白いことをやっているときが一番楽しいものです。私は会社勤めを卒業し今年、コミュニティー「偏愛百貨店」を立ち上げました。特定のものを愛する「偏愛」が、生活や世の中に明るさや楽しさをもたらすという思いから、イベント開催や動画配信をしています。

第1弾はビームスジャパンと組み、ファッション業界で働く若い人のサポートを始めました。

誰もやっていないことに挑戦したり、面白いと思ったことに情熱を注いだりする人の存在があってこそ、ブランドは初めて成立するといえるのではないでしょうか。人の熱量こそがブランドを支える力になります。

大西長く続くブランドが新しいポートフォリオを創り出すことは簡単なことではないと思いますが、昔と同じことだけをやっていては衰退してしまいます。地方のブランディングや町づくりをするうえで大切だと思うのは、映画村や音楽といった文化的なコンテンツをつくることです。人の流れが生まれれば、地域の商店街や古くからの産業が活性化する。

伝統を守りながらイノベーションを起こす志を持つことが、ブランドを成長させるカギになると思います。

(構成:国分瑠衣子)

大西 洋 羽田未来総合研究所社長

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おおにし ひろし / Hiroshi Onishi

東京生まれ。1979年慶應義塾大学卒業後、伊勢丹入社。三越常務執行役員MD統括部長、伊勢丹常務執行役員などを経て、2012年三越伊勢丹ホールディングス社長、三越伊勢丹社長に就任。2018年6月より、日本空港ビルデング副社長、同年7月より現職(兼任)。

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川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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