「ブランド=高額品」と考える日本人に欠けた視点 コロナ禍で激変した消費者の心のつかみ方

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――大西さんは今、シンクタンクである羽田未来総合研究所の代表として、地方自治体や地方企業と連携してジャパンブランドの発信に取り組んでいます。

大西地方自治体などからプロジェクトを受託し、地方のブランディングを進めています。羽田空港という東京と地方、東京と海外をつなぐハブの役割を生かして、地方創生を盛り上げたい。

日本のGDPの半分は地方が稼いでいます。地方には焼き物や和紙など職人技が光る素晴らしい文化や技術があるんですが、販路開拓やPRといった「売る力」が不足しているように感じています。当研究所ではそのサポートをしたい。

その一つが、宿泊や温浴、食事などが楽しめる三重県の滞在型複合施設「VISON(ヴィソン)」です。バーチャル百貨店を開き、2022年から本格的に取り組みをスタートします。

VISONの宿泊施設などに置かれているインテリアやアート作品などをスマホで撮影すると、バーチャル百貨店にジャンプし、購入することができるようになります。将来的には、施設内のパブリックアート作品なども商材に加えていきたいと考えています。

日本の産地にもたらされる利益は十分なのか

川島:三重VISONに私も伺いましたが、地域の生活に根差した土地にあるからこそ、文化や人とつながっているし、ブランディングのヒントがあると感じました。大西さんは早い時期から地方の可能性について言及されていましたが、気づいたきっかけは何だったのでしょうか。

大西前職の百貨店時代に、シャネルやエルメスといった海外のラグジュアリーブランドが日本のテキスタイル(生地)で製品を作っていました。ラグジュアリーブランドが販売すると数十万円になりますが、日本の産地にもたらされる利益は十分なのかという問題意識があったんです。

日本発のラグジュアリーブランドを立ち上げれば、日本から直接海外に売り込むことができる。そう思って、先行して日本全国の逸品をブランディングする「JAPAN MASTERY COLLECTION」を立ち上げました。

今はコロナ禍でインバウンドがストップしていますが、ECやリアル店舗で海外の販路を開拓したいと思っています。

――海外への発信では、羽田未来総合研究所が10月、羽田空港でアートオークションを開き、海外からも注目を集めました。

大西地方創生と並んで、拡大させたい市場がアートです。日本のアート市場は3000億円ほどといわれていますが、欧州では1兆円を超えます。羽田から日本のアートをグローバルに発信したい。オークションは一般的にギャラリーなどが主催して行っていますが、税金がかかるので海外投資家や海外アーティストは参加しにくかったんです。

10月に開催したオークションは、空港の立地が保税地域の一種の「保税蔵置場」であることを活用しました。羽田空港は保税エリアだから、海外からも参加しやすい。オークションは国内のアーティスト、ギャラリーやオークション会社と共同で行いました。草間彌生さんなどの作品を出品し、3時間で合計落札額は二十数億円と想定以上でした。

地方創生もアートも市場がスケールすれば新しい輸出産業になる可能性があります。

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