(誤謬その4)ハイパーインフレが悪いインフレである
上述の3の続きだが、重要なので。ハイパーインフレが起きると経済は破綻である。そして、財政破綻を回避するために、中央銀行が国債の引き受けを直接行うと、インフレになって破綻するから、直接引き受けをしてはいけない。
この議論は、大雑把に言えば、おおむね正しい。だがこの「雑さ」を悪用して、「だからインフレが起きないうちはいくらでも財政出動してよい。実質中央銀行引き受けでもインフレが起きなければ問題ない。現在はインフレの気配すらないのだから、どんどん中央銀行が国債を引き受けるべきだ」という議論は、100%誤りである。
なぜなら、中央銀行が直接引き受けを行い、経済が破綻するときに起きるのは、ハイパーインフレであって、インフレではないからだ。つまり、現在、インフレ率が低いことをもって、いま起きていないということはまだまだ何をやってもよい、というのは間違い。危機はハイパーインフレという形でやってくるのであって、徐々にインフレ率が高まって、高インフレになることとはまったく違うのだ。
そもそも、インフレとはモノの値段が上がることだが、ハイパーインフレとは通貨の価値が暴落することであって、モノの値段は変わらない。日本なら円の価値が暴落するだけのことであって、ドルで見たモノの値段が暴落するわけではない。ただ、円しか持っていない人々がパニックになるから、円を早く処分するために、手っ取り早くモノや資産に変えようとして、大混乱が起きるだけである。
したがって、財政破綻や中央銀行破綻と関係があるのは、通貨の暴落であるハイパーインフレであって、インフレとは無関係だ。だから、現在の日本経済がインフレかどうか、だから財政出動をとことんやるかどうか、ということはまったく無意味な議論であり、何の意味もない。これも、先日書いたとおりではある。
政府が国内で巨額の借金をしているうちは大丈夫?
(誤謬その5)外貨建ての借金がなければ、財政は破綻しない
やはりウソである。これも、先日書いたとおりだ。日本政府財政への信頼が国内で完全になくなれば、誰も国債を買わなくなり、日本政府は倒産する。
さらに「借金が国内から」ということは、政府がデフォルト(債務不履行)となって借金を返さない(一時的にせよ)ことになったときに困るのは、貸した人々だ。つまり、国内で借金をしていれば、資産を失うのは国内の人々になる。政府が破綻した場合には、国内で借金をしているほうが経済への打撃は圧倒的に大きくなる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら