有識者が言いがちな「日本経済10の大間違い」 景気は悪くないし、もはや円安は日本に不利

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このように、完全にインフレは起きている。世界で起きていて、日本だけで起きないはずがないのだ。それが、消費者物価を見ているとインフレが起きていないように見えるのは、日本の消費者がケチだからで(これも昨年書いた)、企業が無理やり見せかけの価格を押さえ込んでいるからである。

しかし、身の回りで値段が下がっているものなど1つもないに等しく、上がっているものばかりである。ついに、牛丼だって主要3社ともに値上げした。実質では、ほかの飲食店ではもっと上がっている。高付加価値メニューに客を誘導している。

すべてのものがそうだ。日本はすでにインフレなのである。

「妥当なインフレ率」など存在しない

(誤謬その3)インフレ率は2%が望ましい

ウソである。

妥当なインフレ率というのは存在しない。物価の下落が急速で継続する、「デフレスパイラル」はよくない。デフレスパイラルは、そのままでは不況から回復できなくなってしまうから、1930年代の大恐慌時のように「ケインズ政策」というショック療法が必要になる。

しかし、あれはあくまでショック療法であり、それ以外のケインズ政策というものは望ましくないし、そもそも当のJ・M・ケインズは想定していないし、推奨もしていない。現在の財政出動をケインズ政策と呼んでいることを知ったら、ケインズは名誉毀損で訴えるだろう。

一方、高いインフレ率が続くのもよくない。ただし、1970年代の世界的なインフレ(日本では狂乱物価だが)、1930年代の大恐慌よりはましである。これは、普通の高インフレなら中央銀行が引き締めを行い、緊縮財政にすれば収束するからである。つまり、普通の調節手段があるからだ。

ただ、現在のトルコで起きているような通貨暴落からの高インフレは別である。これは、ほぼハイパーインフレである。こうなると、経済は必ず崩壊する。崩壊から立て直さなければならない。これは財政破綻よりも経済へのダメージが大きい。したがって、財政を守るために中央銀行を破綻させるのは誤りである。

次ページインフレが起きなければ、中央銀行は何をやってもよい?
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