「もう買いたいモノがない」日本人の消費のリアル 10万円給付金も「使わず貯蓄」されてしまう?

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しかし、こうした“贅沢品”を国民が20年30年買っていても、それは景気に貢献せずデフレを固定化させただけだった。それどころか、そうした商品やサービスが大半を占めてしまったために、「何でも安く手に入る」ことにわれわれは慣れ切ってしまった。貧しくなったせいで、もはや欲しいモノがない国になったとすると実に皮肉だ。

モノではなく、損をしたくない心理をくすぐる

買いたいモノがなく、さらに節約モードも強まりそうな現代、どうすれば人々の消費意欲を伸ばせるのか。

1つの答えは、損得勘定をくすぐることだろう。

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「買わなくては自分だけ損をする」「今買えばトクだ」と思わせる。欲しいモノがなくても、「今だけ金額の30%を還元します」「抽選で購入金額の全額を還元!」と聞くと、人は「買わなければ!」と落ち着かなくなる。それが欲しいから・必要だからという理由ではなく、その損得の権利を享受するために、さほど必要がなくても無理やり買おうとするだろう。

しかも、ポイント還元なら効果倍増だ。付与されたポイントを消費するために再度購入してくれるうえ、その際の支払いにもポイントが付く。いわゆるポイントの無限ループで、もはや失効しても構わないと諦めない限り、永遠に消費を促せる。

「オトク」がどれだけ人を促す効果があるかは、GoToトラベルで実証済みだろう。あれは、旅行に行きたいというより、「ほかの人がトクをしていると聞いたから、自分も行かないと損だ」という心理を突いたのだ。

もし、政府が消費促進としてお金をバラまきたいなら、ついでにポイント還元をセットにすればいい。2019年に実施されたキャッシュレス・ポイント還元事業の、いわば高還元額バージョンだ。あのときは最大5%還元で、しかも中小企業対象だったが、そこは改良していただく。デパートも大手チェーンも参加してもらい、還元率は高額消費になるほどアップする仕組みにすれば、お金持ちほどどんどん消費してくれるだろう。

バラまいたお金が貯蓄に回るのが嫌なら、どうすれば人は買う気になるかという心理について、合わせ技で政府は策を練るべきだ。景気浮揚のための予算はしっかりとってあるのだから、ぜひ効果的に使ってほしい。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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