日本の醤油メーカーがインドに熱視線を注ぐ理由 規制緩和で「本醸造しょうゆ」が販売可能に

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それにしても不思議なのは、約14億の人口を抱え、世界最大級の食料消費国であるインド展開がこれまで実現できていなかったことだ。そこにはインド特有の事情があった。インドはもともとスパイスを活用する独特の食文化があるため、しょうゆが入り込む余地がなかったのだ。しかし、近年、「インド中華」(インド流にアレンジされた中華料理)の人気が高まるなど食文化が多様化してきている。

また、インドでは、しょうゆに関する食品規制で、糖分やアミノ酸など食塩以外の「可溶性固形分」が25%以上あることが必要だった。現地には「ダークソイソース」といわれるドロッとして甘みの強いしょうゆがあり、これは基準をクリアしている。一方、大豆と小麦、水、塩だけでつくる日本の本醸造しょうゆはこの条件をクリアできない。

それが、日本政府の要請もあり2021年7月にインド政府がこの規制を変更し、本醸造しょうゆでも適合可能な15%以上に引き下げると発表したのだ。これでようやく日本の本醸造しょうゆを広めるチャンスがめぐってきたわけだ。

ブランド認知度ゼロからのスタート 

そんな状況下のインドでは、日本の本醸造しょうゆの認知度、存在感もゼロに等しい。ゼロからの出発を強いられることになる。

キッコーマンは2021年2月より、インドでのマーケティングや営業活動を展開。コロナ禍でのスタートとなり、当初はレストランも営業していない状況だったが、その後徐々に回復し、当初に想定した数字に近づいてきたという。

力を入れている活動のひとつにニューデリーやムンバイなど大都市のホテルで、実際にしょうゆを使った料理を実演し、試食してもらうイベントだ。ホテルやレストランのシェフ、オーナー、メディア関係者などにしょうゆの味、香りなどを体験してもらい、本醸造方式でつくるしょうゆと現地のしょうゆとの違いや、キッコーマンブランドの認知度アップを図ることが狙いだ。あるホテルでのイベントでは参加者から「これまでのホテルの料理よりもおいしい」という反応もあったという。

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