衆院選「各党のネット戦略」詳細分析で見えたこと 今後は政党間格差が広がってしまう懸念もある

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逆に、現役の自治体の首長としての活動や実績を選挙関連情報と一緒に発信していたのは日本維新の会だ。フォロワー数が6万人と少なく、代表・副代表の個人アカウントのほうが遥かに多いフォロワーを抱えているためか、代表・副代表に関する投稿が中心となっていた。

二人それぞれの街頭演説の写真に政策や主張を載せた文字入り写真の投稿も続けた。文字入り画像はインスタグラムで流行った手法だが、同党はインスタグラムに公式アカウントを持っていなかった。ハッシュタグも頻繁に使われたのは「#自民か維新かそれ以外か」の一つだけだった。

国民民主党もフォロワー数が4万人と少なかったが、特設サイトと同様にデザイン上の統一感があった。候補者の名前と選挙区、動画での主張がツイッター上で確認できる「#動く選挙ポスター」という独自の投稿もあった。キャラクターの「こくみんうさぎ」を活用する点で他の政党との差別化がなされていた。

関心のある政策についてツイッター上でアンケートを取ることや、インスタグラムに誘導することにも独自性が見られた。ハッシュタグとしては「#比例は国民民主」や「#国民民主党にワクワク」、「#比例は国民民主でガソリンが安くなる」など感情に訴えるもの、政策と政党を結び付けるものなど丁寧に作られていた。ただ、その分投稿の多様性が減り、投稿量も比較的少なかった。

れいわ新選組は10万人のフォロワーを有し、山本代表による演説情報を中心に政策や発言の文言を多く含む写真を投稿し、見ている人の問題意識を高めた。ただ一日あたりの投稿量は少なく、そのために「#山本太郎のことは嫌いでもれいわのことは嫌いにならないで」や「#奨学金チャラ」といった独特なハッシュタグも使用量が少なかった。

幅広い層から支持を集めている印象を与えた共産党

共産党は12万人のフォロワーを抱え、リツイートが多く、候補者だけでなく一般の人の投稿と思われるものも拡散することで幅広い層から支持を集めている印象を与えた。ハッシュタグは「#とことん共産党」や「#政権交代をはじめよう」など種類が少ないものの繰り返し用いられていた。

公明党はフォロワー数が10万人で山口代表を中心とした投稿となっており、若者支援や選択的夫婦別姓について繰り返し投稿するなど政策的立場を強調。ただ、ハッシュタグを見ると「#公明党CM」、「#脱炭素」といった単純なものが目立ち、全体的に投稿数も少なかった。

社民党はフォロワー数が4万人で、一般の人の投稿に対するコメントの積極的な投稿や候補者と主張を紹介する投稿が多く、見た目は他の政党に比べ素朴でも基本の情報とハッシュタグを丁寧に盛り込む投稿が特徴的だった。「#あなたの弱音が政治の課題」や「#生存のための政権交代」といったハッシュタグを繰り返し用いた。

ただ、投稿数自体は少なく、投稿に対するいいねやリツイートといった反応はフォロワー数が数千人少ない国民民主党含め他の政党が数十、数百獲得することが珍しくないなか、一桁または二桁が多く、あまり注目されていないことがうかがわれた。

フォロワー数が1万人と最も少ないNHK党は1行のメモだけ入れた報道記事リンクや動画共有が中心だった。立花代表の主張も報道のタイトルとリンクを紹介するのみで、ハッシュタグも用いていなかった。政党としてSNSの活用には積極的ではないことは明白で、反応も一桁か二桁というものが多かった。

ここまで政党の公式SNSについて触れてきたが、そこには多くの課題が残されている。選挙では政党よりも候補者のほうがSNSのフォロワーが多く、優れた発信をしていることが珍しくない。その原因は政党の公式なアカウントゆえの制約にあると思われ、注目を集めるような投稿がしにくいことがうかがえる。

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