衆院選「各党のネット戦略」詳細分析で見えたこと 今後は政党間格差が広がってしまう懸念もある
選挙やリーダーのあり方をめぐって「発信力」という言葉を聞く機会が増えた。2021年9月の自民党総裁選では菅義偉元首相の発信力不足の克服が課題として浮上。河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4人の候補者は全員が活発にSNSで発信した。翌月行われた衆院選ではコロナ感染防止対策もありSNSによる発信が重視された。ただ、発信力は注目されるものの、発信量やフォロワー数が多い候補者が当選するとは限らない。
デジタル化やコロナ禍の影響を受けてネット上での広報戦略が注目されているが、先般の衆院選ではどのような傾向が見られたのだろうか。本稿ではこれまでの広報戦略の経緯を振り返ったうえで、今回の選挙における政党の動きを概観し、今後の展望を描きたい。
選挙が終わるたびに「SNSは票に結びつかない」
選挙におけるメディア戦略の重要性は1990年代から指摘されていた。2000年代には小泉純一郎元首相によるワンフレーズポリティクスや小泉劇場、さらにはPR会社なども活用したデータに基づく広報戦略といったものが注目を集めた。
2009年と2012年の政権交代でもマスメディアを舞台とした広報戦略が勝利に貢献したと語られてきた。そして2013年にはネット選挙が解禁された。
以降、選挙のたびにSNSが注目され、各政党や候補者のネット戦略は少しずつ高度化した。ネット選挙ではウェブサイトの構築や各種SNSに適したコミュニケーションを展開するため外部の制作会社やコンサルタントを雇うことが増え、他の候補者に負けじと、より優れたサービスを利用する圧力も生じた。
ただ、選挙が終わるたびに「SNSは票に結びつかなかった」という政治家の落胆の声が報じられた。票という成果に結びつかない問題は候補者にとって悩みのタネであり続けている。
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