(第31回)就業構造変化での日米間の顕著な差

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(第31回)就業構造変化での日米間の顕著な差

前回述べたように、日本経済においてそれまで雇用機会を提供してきた製造業の成長が、1990年代の中頃から頭打ちになった。それに伴って雇用が減少し始めた。製造業の雇用は全体の2割を超えるものであったから、これが減り始めたことの影響は大きい。

製造業に代わって雇用を吸収したのは、生産性が低いサービス産業だ。この部門が、非正規労働者を中心として雇用を増やした。新規雇用の創出は容易なことではないので、こうなったのはやむをえない面もある。しかし、問題は、それが所得水準の低下をもたらしたことである。「失われた20年」の本質は、このような過程を通じて、日本経済の生産性が低下する過程だったのである。

今後を展望しても、製造業の雇用が増えることは望めず、減少が続くだろう。生産拠点の海外移転が進めば、製造業の雇用減が急速に進む可能性もある。したがって、どこかの部門が雇用を増やさなければならない。それがサービス産業になることは、間違いない。

ただし、「サービス産業」とひとくくりにするのでは、粗すぎる。少なくとも、「低生産性サービス業」と「高生産性サービス業」を区別する必要がある。これらは、さまざまな点で明らかに異なる産業だ。そして、今後の日本経済が所得水準の低下を回避するには、後者を増やしていく必要がある。これについて、以下に考えることとしよう。

高生産性サービス業が日本では成長しない

非製造業の中には、性格の異なるさまざまな産業が含まれる。ここでは、次の区別をしよう。

第1グループは、飲食・宿泊、運輸、複合サービス、その他サービスだ。これらの部門の賃金水準は、平均より1割以上低い。資本装備率が低く、単純なサービスが中心になるため、「低生産性サービス業」にならざるをえないのである。

第2グループは、電気・ガス、情報通信、金融・保険、不動産、医療福祉、教育・学習支援から成る「高生産性サービス業」である。

前者の賃金水準は製造業より低く、後者は製造業より高い(なお、卸売・小売は全体とほぼ同じ水準である。また、鉱業、建設業は製造業より低い)。

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