(第31回)就業構造変化での日米間の顕著な差

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 ところで、80年代のアメリカにおける製造業からの転換は、決して簡単に実現したことではない。日本との貿易摩擦の中で、製造業が次々に撤退を余儀なくされたが、労働組合の強い抵抗があった。日本の輸出の自主規制を求めたり、国際協調介入でドル安を実現したりすることによって、製造業の衰退を食い止めようとする試みもなされた。

しかし、結局のところ、上で見たように新しい雇用が創出されたわけである。しかも日本におけるように生産性の低いサービス産業で雇用が増えたのではなく、生産性の高いサービス産業が成長したのだ。

このような雇用創出は、どのようにして実現したのだろうか? 政府が援助を与えたわけではなく、雇用創出政策で誘導したわけでもない。市場メカニズムを通じた自動的なメカニズムによって実現したのだ。雇用創出は政府が行うことではなく、市場が行うことなのである。

米連邦政府、労働省
厚生労働省「労働力調査」



野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。


(週刊東洋経済2010年9月18日号 写真:尾形文繁)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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