1990年代後半以降の貧困世帯の増加は、低賃金労働の増加によるところが大きいと前回述べた。この過程をより詳細に見ることとしよう(下表も参照)。
まず、「毎月勤労統計調査」によって、5人以上事業所の現金給与総額の指数(2005年=100)につき、95年と00年、07年を比較しよう。全産業では、105・6、105・6、99・2と推移した。つまり、90年代後半はほぼ不変で、00年以降に下落したのである。
しかし、製造業の給与はこの期間を通じて下落しておらず、93・2、97・3、100・8と推移した(下落したのは経済危機後であり、09年に94・1になった)。
給与の下落が著しいのは、サービス業なのである。00年と07年を比較すると、卸売・小売業は108・7から99・9に、飲食店・宿泊業は、109・6から94・8に、運輸業は107・5から99・5に、それぞれ下落した。
なお、サービス業の中でも、金融・保険業は98・8から100・2へと上昇した。また、建設業は107・4から102・5へ下落した。
このように、給与の動向は業によってかなりの差がある。概して言えば、小売業、飲食店、運輸業、建設業など生産性が低い産業で下落し、製造業、金融・保険業など生産性が高い産業で上昇しているのである。