まずは、職場の仲間同士でもいい。自分たちが日頃見ている業績進捗表といった視野とは異なるモノの見方、つまりビジネス全体を俯瞰できるようなフレームワークを定義し、そこからビジネスをとらえると、どのように視界が開けるのかを体感してみてほしい。もし適切なフレームワークを思いつかなければ、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』の第6章「次の打ち手を考える力」の一読をお勧めする。何らかのヒントが見つかるはずだ。
ステップ2:バルコニーをバランスよく作る
ここまで「バルコニー」とひとくくりで語っていたが、実際にはバルコニーはひとつではない。無数に存在する。
たとえば先ほどの事例は、「マーケティング」というバルコニーからの視野だったが、「会計」というバルコニーに登れば、固定費や変動費といったコスト構造の視野を得ることができ、どれくらいの商品数をさばかなくては儲けが出てこないかに気づくことができるだろう。「ビジネスモデル」という階段を登れば、自分たちがどこで顧客を獲得し、どうやってトータルとしての利益を獲得するのかを考えることができる。
「リソースマネジメント」の視界からは、自分たちが持っているリソースに何があり、どのタイミングでどのリソースを活用すべきかが見えてくるだろう。
このように無数にバルコニーが存在する中で大事なことは、自分自身の姿を360度、どの視点からでも眺められるように、「バランスよく」バルコニーを用意しておくということだ。人間は行きつけのバルコニー(つまり得意分野)があると、つねにそちら側だけから見たがる傾向があるが、それでは物事を一側面からしか眺めていないということになる。
大事なのは「バランス」だ。バランスを取るにはバルコニーが複数必要だが、一方で数多く作ればいいというわけではない。イメージとしては、初めのうちは3つ4つ程度があればよい。よく「ヒト・モノ・カネ」と1セットで言われることがあるが、これは自分たちのビジネスの姿を3方向からバランスよく眺めることができる一例である。
もちろん、バルコニーを「作る」ということは、そんなに簡単ではない。一度「そういう見方がある」と理解したところで、それをすぐに実務で使えるようにはならないだろう。大事なことは、いったんその見方を理解したら、何度もそのバルコニーに立ってみることだ。ここにはある種の反復トレーニングが必要になってくる。トレーニングの仕方は長くなるのでここでは割愛するが、数は少なくてもいいので、自分のモノになる視界をいくつか確保しておくことが重要だ。
ステップ3:いつ、どのバルコニーに登るのか、勘所を持つ
しかし、いくらその視界を確保したからといって、「いざ」というときにその視点に立てなければ意味がない。何もないときにはバルコニーの存在を意識できるのだが、いざ臨戦態勢になった瞬間、フィールドに降りっぱなしでひたすら目の前の球を打ち返している、ということはよくあることだ。
たとえば、「このままいけば業績が未達となってしまう状況下で、残り3カ月間どう戦うか?」という場面があったとする。本来はそのタイミングでも、視野を高くして物事を捉えることができれば、新しいアプローチが見つかるはずだ。しかし、多くの人は無意識のうちに、今までの延長線上で絨毯爆撃(手当たり次第のアクションを取ること)を行ってしまう。そして、一連の行動が終わって冷静になったとき、いかに自分の視野が地上レベルで留まっていたかに気づくのだ。まだ「バルコニー思考」が定着していないときに、この手のことはよく起きがちだ。
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