一肌ぬげるかどうかが人脈の決め手になる--『人脈のできる人』を書いた高田朝子氏(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科准教授)に聞く
--修羅場で人脈ができやすいようですね。
面接調査したビジネスパーソンや医者の多くは、いわゆる修羅場をともに経験した相手を人脈メンバーと考えていた。そこでは緊張を強いられ、試行錯誤を余儀なくされる。それだけ人物の本質が観察でき、当然濃密なコミュニケーションも必要で、結び付きが強くなる。その事態をくぐり抜ければ達成感も共有することになる。
修羅場とは、ルーティンワークではなく、さまざまな出来事が不規則に生じ、それに対応しなければいけない状態のことで、組織では結構起きる。それが人脈形成の機会となりうる。
--仕事のできる人は必ずしも人脈を意識していない……。
調査対象に、会社から「仕事のできる人」をピックアップしてもらい、面接した。その多くの人が人脈作りを意識していなかった。各種のパーティに行って、大量に名刺をもらってくるような人がいる。これは、いたずらに自分に顔が広いという自己暗示をかけ、逆に自己過信の幻想を抱くことになる。
--地位や生まれに付随した人脈もあります。
会社での地位が上がれば、それに伴って出てくる人脈はある。しかし、この「取り巻き人脈」がいいとは限らない。地位に伴う人脈は、言ってみれば銀座のクラブと同じではないか。地位が地位なので、相手は「パターン」として寄ってきて、ちやほやしてくれる。しかし、実際には冷静に見ているものだ。
一方の生まれによる「七光り人脈」は、出だしはいい。とりあえず信用があるので、本人も楽だ。しかし、それだけで人脈として維持できるか。30歳を過ぎて、親父が、親父が、などと話されると、私はぞっとする。長島一茂さんのように特化してしまえばいいのかもしれないが。