『モチベーション3・0』の著者、ダニエル・ピンク氏に聞く--才能より「やる気」が重要。大事なのは利益ではなく目的のために働くこと
アップルはグーグルとは違う。社員はある程度自由を与えられているが、基本的にトップダウンの会社だ。スティーブ・ジョブズの個性とヴィジョンが会社の中心にある。
ただ「目的」という点で、アップルは「モチベーション3・0」の条件を満たす。設立当初から強烈な目的意識を持っている。ジョブズの「宇宙に衝撃を与える」という言葉は有名だ。1984年に初代マックを発売したとき、ジョブズは「このコンピューターは左脳的な人間ではなく、右脳的な人間のためにつくった」と語った。
--リーマンショックを経て、投資銀行の報酬制度は大きく変化したのでしょうか。
その可能性は極めて低いと思う。しかし、ベンチャーキャピタル業界では、報酬制度を見直す動きも出ている。過去10年、米国のベンチャーキャピタル業界が低迷している一つの理由は、多くの人間がお金目当てにこの業界に参入した点にあると思う。
彼らは「すぐに金持ちになれるから、この業界に入った」と言う。だが、真に優れたベンチャー投資家は、金銭ではなく、「次なる偉大な企業、次なるグーグルやアップルの手助けをしたい」という思いに突き動かされている人だ。
--日本で「モチベーション3・0」の条件を満たす会社はある?
初期のソニーだ。強い目的意識があった。デザインの重要性をいち早く認識し、デザイナーに自由を与えていた。今のソニーは昔持っていたものを少し失ってしまったようだ。
トヨタやホンダも興味深い例だ。絶え間ないカイゼンのためには社員の自律性が必要になる。しかし、それを欧米人の多くは理解しておらず、カイゼンが凝り固まった手法であると誤解している。日本の工場では、何か異常があれば、誰でも製造ラインをすぐに止めることができる。これは自律性の最たるものだ。