『モチベーション3・0』の著者、ダニエル・ピンク氏に聞く--才能より「やる気」が重要。大事なのは利益ではなく目的のために働くこと
トヨタ、ホンダは「熟達」の点でも優れている。たとえば、エドワード・デミング博士が米国で無名だった頃から、日本企業は彼の品質管理論を取り入れていた。そのデミング博士が強調していたのが、外発的な動機の限界と内発的な動機の重要性だった。
--単刀直入に言って、才能とやる気はどちらが重要なのでしょうか?
やる気だ。われわれはこれまで、生まれながらの能力を過大評価してきた。同じ誕生日に生まれた赤ん坊の間に、DNAや才能の点で大きな違いがあるとは思わない。本当に大事なのは、好きなことをやり、自主的に行動し、一生懸命に働き、短期的な利益ではなく目的のために働くことだ。
--現在の米国の教育システムは、生徒のやる気をうまく引き出せているのでしょうか。
米国の教育は間違った方向に進んでいる。今の教育は、「もしテストの点数がよければ、25ドル上げますよ」というふうなアメとムチの手法で行われている。これはひどいやり方だ。子供にとって大事なのは、内発的な動機。子供が一心不乱に勉強するのは、良い点数を取りたいときではなく、何かを学びたいと強く感じだときだ。
米国の教育制度の問題の一つは、教師に十分な自律性が与えられていない点にある。教育行政は、国会議員が各地の学区に命令し、学区が各教育委員会に命令し、教育委員会が校長に命令し、校長が現場の教師に命令するという流れで行われている。もっと現場の教師や生徒に自律性を与えなければならない。
--このままでは将来、米国はイノベーションで中国に抜かれる?
私は楽観的だ。米国は大きな国だが、変化が必要となれば、非常にすばやく変わることができる。中国は、右脳的志向が必要な分野では、米国に追いつけないだろう。なぜなら、言論の自由がないからだ。