『モチベーション3・0』の著者、ダニエル・ピンク氏に聞く--才能より「やる気」が重要。大事なのは利益ではなく目的のために働くこと
たとえば、日本では、「菅首相は大バカだ」と通りで叫んでも問題はないが、中国ではそうはいかない。人々が気兼ねなく言いたいことを言い、やりたいことをやれる環境から、イノベーションは生まれる。中国は現在、問題解決やプロジェクトに重点を置いた米国型の教育へとシフトしようとしているが、言論の自由が確保されない限り、イノベーションは多く生まれないだろう。
--高齢化により、人間のやる気の形も変わってくるのでしょうか。
そう思う。数々の事例や発達心理学によると、人間は年を重ねるほど、人生の意味や社会貢献について考えるようになるという。日本では、20,30年後に65歳以上の人口が全体の40%を越すと聞いている。それは人類にとって未曾有の経験だ。
米国でも、13分ごとに100人のベビーブーマ世代が還暦を迎えている。高齢化というと、財政負担などの問題ばかり強調されるが、実はポジティブな面もある。先進国において大多数の人間が、人生の意味や社会貢献について考え始めることによって、社会が大きく変わる可能性がある。これは本当に画期的なことだ。
今まで、人間の人生は、「教育(学校)、仕事、引退後」という3つの時期に分かれていたが、そこに新たなカテゴリーが加わろうとしている。それは、「非コアキャリア」と呼ぶものだ。これは定年退職後に5~10年程度、NPOやパートタイムなどで働くことを指す。
こうした仕事は、従来の仕事ほどには報酬を稼げないが、より有意義で社会に貢献することができる。医療分野の仕事などが一つの例だ。