(第27回)アジア新興国の成長で賃金が下落しデフレに

(第27回)アジア新興国の成長で賃金が下落しデフレに

前回、「賃金が下落した背景に、非正規労働者の増加がある」と述べた。ただし、「非正規労働者の増加が賃金下落の原因」というだけで終わってしまえば、表面的な議論になる。重要なのは「なぜ非正規労働者が増えたのか」である。

その答えは、1990年代以降、新興国の製造業が発展し、日本の輸出が世界市場でこれと競合せざるをえなくなったことにある。特に日本の主要輸出品である家庭電化製品、エレクトロニクス、半導体などの分野で、韓国、台湾などの新興国が、基本的には日本と同じ技術を用いて日本製品と同等の製品を生産できるようになったことの影響が大きい。

そうなれば、世界市場において製品価格の平準化が進む。そして、賃金面でも平準化が進むのである。このように、直接には貿易されない生産要素(労働や資本など)の価格が、製品貿易の結果、世界市場の条件にサヤ寄せされてしまう。これは、経済学で「要素価格均等化定理」として知られる命題だ。

ただし、これは経済理論の世界での命題であり、現実の世界ではそうはならないと考えていた人が多かった。70年頃まで、製造業は日米欧の先進国がほぼ独占する産業であり、これらの諸国の経済状況はあまり大きく違わなかったからである。

社会主義圏にも製造業は存在したが、西側自由主義国との貿易は限定的だった。また、アジア諸国は、日本を除いては工業化以前の発展段階にとどまっていた。特に人口巨大国中国は、70年代末まで文化大革命の混乱が続いており、西側諸国と経済的には事実上、切り離されていた。

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