(第26回)世界を混乱に陥れた外需依存成長の正体

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(第26回)世界を混乱に陥れた外需依存成長の正体

2003~04年に行われた大規模なドル買い介入は、円キャリー取引(円で資金を調達し、高金利国の通貨で運用する取引)を誘発した。キャリー取引の実態はよくわからない面が多いのだが、日本の大規模介入の後で顕著になったと考えられる。

この取引が拡大したのは、円高にならないという期待が形成されたためだ。その意味を説明しよう。

金利平価式によれば、低金利の円から高金利の通貨に転換して投資を行っても、円高になって金利差を打ち消すだけの為替差損が発生し、国内の投資と収益率が同じになるはずだ。しかし、日本政府は、大規模介入によって、1ドル=100円を超える円高を許容しないと全世界に宣言したようなことになった。だから、金利差を求める投機主体としては、安心して投機ができるようになったわけだ。その意味で、円キャリー取引は、日本政府・日銀の大規模介入が招いたものだということもできるのである(ついでに言えば、介入の結果、巨額の外貨準備を保有し、しかもそのほとんどがドル建て資産だったということは、日本政府自身が大規模な円キャリー取引を行ったと解釈することができる)。

資本が自由に国境を越えられる世界では、金融政策や為替政策は、ただちに世界的な意味を持つ。日本や中国のように経済規模が大きい国の場合には、特にそうだ。

では、円キャリー取引で調達された資金は、どのように投資されたのだろうか? アメリカのヘッジファンドや銀行の子会社などが、カリブ金融センターに設立した子会社で円建ての短期債券を発行し、それによって調達した資金をサブプライム証券化商品に投資した可能性がある。

日本の外貨準備や金融機関からの投資は、大部分がアメリカ国債の購入に回った。中国の外貨準備も同じだった。これらの投資は、グリーンスパンFRB(米連邦準備制度理事会)前議長が「謎」だとした「政策金利を引き上げても長期金利が上がらない」という現象を引き起こした。つまり、アメリカにおける金融引き締め政策の効果を減殺したと考えられる。その意味では、アメリカの金融バブルに寄与したことになる。しかし、それは間接的な効果だった。

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