第一は、輸出の増加が経済成長を牽引したことだ。02年以降、実質輸出の対前年増加率は、継続して7・5%以上の高い伸びを示した。04年においては、13・9%という非常に高い伸び率になっている。その半面で実質家計消費支出の伸び率は、高くても1%台の後半でしかなかった。
高度成長期の日本では、設備投資が経済成長を主導するのが普通であった。しかし、今回は明確に異なる姿となった。「外需依存の景気回復」と言われるのは、このためだ。
企業の利益が増加し賃金は減少
第二の、より注目すべき特徴は、分配面にあった。
国民経済計算での「営業余剰(純)」は、01年の63兆円から07年の81兆円へ18・6%増えた。しかし、「賃金報酬」は、同期間に229兆円から224兆円へ、2・3%低下したのである。額で言えば、営業余剰が18兆円と、名目GDP増加とあまり変わらない規模だけ増えたのに対して、賃金が5兆円減少したのだ。
法人企業統計で見ると、全産業の営業利益は、01年度の29・6兆円から07年度の49・5兆円へ20兆円近く増加した。経常利益は、01年度の28兆円から07年度の53兆円へ25兆円増加した。率で言えば89%の増加である。税負担を引いた当期純利益は、26兆円増加した。その半面で、従業員給与は139兆円から125兆円へと14兆円減少しているのである。
このように、どのような統計で見ても、企業利益が著しく増加する半面で、賃金が下落しているのだ。こうした現象は、日本経済がこれまで経験しなかったものである。