満を持してアサヒが挑む、ドライ復活「今度こそ」作戦
7月下旬のある日、午後7時。気温35度を超す猛暑日だったこの日、東京・銀座の一角に長蛇の列ができていた。その数100人超。珍しがる外国人観光客が店員に待ち時間を聞くと、「2時間です」。
列の先にあるのはアサヒビールが5月下旬に出店した「スーパードライ エクストラコールドBAR」。通常温度より低い氷点下の「スーパードライ」を楽しめる、期間限定の立ち飲みバーだ。店内に入ると、意外なことに気づく。若者や女性客が圧倒的に多いのだ。
スーパードライは言わずと知れたアサヒの看板商品。だが、1987年の発売から今年で23年。愛飲者は50代以降が中心となり、すっかり「オジサンのビール」というイメージが定着した。さらに、アルコール需要の低迷や安価な第3のビールの台頭で、販売数量はピーク時と比べ4割近くも減少している。
大型商品ゆえのジレンマ イメージ戦略にもブレ
そのスーパードライの“復活”こそが、アサヒの将来を握るといっても過言ではない。今やビール会社でとかく注目されるのは海外事業で、アサヒも海外企業のM&Aなどへ意欲を見せる。が、海外進出にはまず先立つものが必要。その源となるのが国内の酒類事業、特にビール類事業にほかならない。実際、2009年12月期でもアサヒの売上高の約67%、営業利益の約95%は同事業が稼いでいる。ビール類の中でも、販売数量の約7割を占めるスーパードライは紛れもない生命線である。
しかし同時に、スーパードライはアサヒの“足かせ”にもなってきた。
スーパードライの地位を守ろうとするあまり、ビールで大型商品を打ち出せなかったうえ、第3のビールではキリンビールが05年に「のどごし<生>」を売り出したのを横目に、アサヒは08年の「クリアアサヒ」までヒット商品を送り出せなかった。結果、昨年はついにビール類シェアで、宿敵キリンに9年ぶりに首位を奪われる悔しさを味わった。こうした中、近年は伸び盛りの第3のビールに力が入る一方、スーパードライ戦略は手薄になっていた感がある。