英語だけではグローバル競争に勝てない グローバル化の本質を誤解している日本(上)

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この大事な問いに答える前に、グローバル化の本質について述べておきたいと思います。

世界で統一的な基準、すなわち「グローバル・スタンダード」という基準があり、その基準に合わせることがグローバル化である。みなさんのなかでも、そう考えている方が数多くいるのではないでしょうか。

味の素はなぜ成功できたのか?

しかし、そういった考えは誤り以外の何物でもありません。そもそもビジネスの世界では、「グローバル・スタンダード」などという統一的な基準は、どこにも存在していないからです。

グローバル化の本質は、徹底した現地化です。インドではインドで通用する方法でビジネスをしなければなりませんし、ブラジルならブラジルで通用する方法でビジネスを考えなければなりません。日本やアメリカで成功したからと言って、その方法をそのままインドやブラジル、その他の国々に持ち込んだとしても、失敗する可能性のほうが高いと考えるのが、成功している企業の考え方です。

たとえば、風味調味料で有名な「味の素」は、インドネシアやフィリピン、タイといった東南アジアの国々では、あえて日本とは異なる販売方法を用いて成功を収めています。 

食品業界ではルートセールス(定期巡回販売)は卸売業者や販売代理店に任せるのが一般的なのですが、味の素は東南アジアでわざわざ約5000人の現地営業マンを雇い、個人の零細店を中心に地道なローラー方式で営業してきたのです。営業マンは営業先で販売、陳列、接客と一人何役もこなし、先進国で販売する量よりも小分けにした調味料を1個10円台でコツコツと販売、味の素は今や東南アジアの調味料市場で6割のシェアを獲得するに至っています。

味の素が成功できたのは、発注単位の大きい大店舗に対してではなく、個人の零細店に対して通常とは異なるルートセールス(定期巡回販売)を展開し、かつ通常とは異なる少量の単位で販売してきたからなのです。まさに、手間もコストも時間もかかる方法を選択したのです。しかし味の素は、東南アジアの人々の価値観やライフスタイルを大掴みながらも理解していたから、そういった判断ができたのでしょう。

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